オリジナルコントのブログ

オリジナルコントの脚本

コント 遭難


  ツッコミ:三段落下がる行  ボケ:通常の段落の行  ()内は動き、擬音の表現


舞台、設定:男が寝ている。

   ツッコミ(遭難者):うわ…なんか眩しい…ん?…もう朝か?…あれ?ここ何処
   だ?家じゃない…ん?俺どうしてこんな所にいるんだっけ?…あ…そうだ思い出し
   た!…沖縄旅行に来てたんだった…ん?いや違うホテルじゃない…そうだ確か沖縄
   へ行く途中の、飛行機に乗ってて…確か…機長が「エンジントラブルが発生しまし
   た」とか急に言い出して…それで大きく機内が揺れだして…「山中に緊急着陸しま
   す」ってアナウンスが流れてから…それで凄く怖くて…でも助かったのか…あれ?
   でも他の乗客はいないしな?…墜落した衝撃で俺だけどっかに飛ばされたのか
   な?…でも体は全然痛く無いし、服も汚れてないし…変だな…ん?なんだ…?あ
   の…大きな…か…川か…?ちょっと、とりあえず、救助が来るまで水とかも確保しな
   きゃいけないし、誰かいるかも知れない…行ってみるか…。(川まで歩く)
   うわ…近くまで行くと…ずいぶん大きな川だな…対岸が見えない…湖か?…あれ…
   人がいる…やった…同じ乗客の人かな…?あの…すいません…ここって何処か分か
   りますか?
ボケ(川渡し人足):…。

   (遭難者):あ、突然すいません、ちょっと僕もよく覚えてないんですけど、乗っ
   てた飛行機が山中に不時着してしまったみたいで、それで機内からなんか投げ出さ
   れてしまったのか、自分だけこんな所に来てしまって…それでしばらく気を失って
   たみたいなんですけど、この川が向こうから見えたから来ました…。
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):何か急に色々言ってすいません…あのそれで旅行先で予約してたホテ
   ルとかにも早く連絡取りたいんですけど…スマホとか財布とか全部何処かに行っち
   ゃってて、ここの場所も分からないし…。
(川渡し人足):そうでしたか…それはお気の毒でしたね…。
   (遭難者):…あの、一番近い街ってどの辺りですか?
(川渡し人足):この辺りに街はありません。
   (遭難者):え!?そうなんですか…?そうか…じゃあ…ここって大体何処あたり
   か分かりますか?
(川渡し人足):ん~何処と言われましても…。
   (遭難者):なら…この川の名前は分かりますか?
(川渡し人足):この川は三途の川と申します…。

   (遭難者):え!?…は?
(川渡し人足):三途の川です…。
   (遭難者):三途…?
(川渡し人足):あの芸能プロダクションのサンズじゃ無くて漢数字の三に用途のとの、
 あのしんにょうに余ると書くずです。

   (遭難者):いや…分かってますよ!…え?三途の川って…え!?…おい…うそ…
   だろ…そうゆう事なの?…でも…確かに飛行機信じられないくらいめちゃくちゃ揺
   れてたし…あの状態から…全くの無傷って…ちょっと普通考えられない…それに気
   づいたら誰もいないのも変だし…不時着する直前まで見てた山中の景色とも違う
   し…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…おい…うそ…だろ…もしかして俺…死んじゃ
   ったの?…あの俺…もしかして死んじゃったんですか…?
(川渡し人足):私…川越し人足の為、下界の事はよく分かりませんが、皆さん三途の川と聞くと、なにか急に思い出されて、絶望する様な、今の貴方と同じリアクションをされます。

   (遭難者):…いやあなた下界って言っちゃってるし…そりゃ…自分が死んだ事を
   知るんだからそうだろうな…は…はは…俺…やっぱり死んじまったのか…21
   で?…はは…とうとう彼女も出来なかったし…全然やりたかった事何にも出来なか
   った…来年就職も決まってたのに…はぁ…なんか、つまんねー人生だったな…。
(川渡し人足):大丈夫ですか?
   (遭難者):大丈夫じゃ無いですよ!!え?…他の人って、皆さんどうしてるんで
   すか?
(川渡し人足):あ…そうですね、ご老人の方ですとどこか悟られていらっしゃって、すぐにこの船に乗って川を渡られる方がほとんどなんですけど、若い方は皆さんよく何日も呆然としたり、泣きわめいたりされます。

   (遭難者):でしょーね!!俺も今そうしたい気持ちを押し殺して、懸命にあんた
   と話してますよ!はぁ…俺の人生終了か…はぁ…くそ…あの飛行機にさえ乗らなけ
   れば……で?俺はこれから何処に行くんですか…?
(川渡し人足):この船で行く場所は天国と決まっております…。
   (遭難者):天国…!?

(川渡し人足):はい、天国では神様にお願いすれば好みの人物も、世界中のご馳走も、美酒も、温泉やアトラスション等の巨大レジャー施設でさえも何もかも瞬時にご用意され、現世の苦痛、苦悩を心ゆくまで癒す事が出来ます…。
   (遭難者):え!?…凄い…何でもすぐに叶うんだ…それってほんとにイメージ通
   りの天国じゃん!?でも神様に頼むってどうゆう事ですか?
(川渡し人足):紙に書いて渡すと1秒でご用意されます。
   (遭難者):紙に書いて渡すんですか…。
(川渡し人足):一蘭方式となっております。
   (遭難者):一蘭方式…そ、そうですか…でも本当に天国ってあったんだ!?…
   え!?じゃあ俺がやりたかった沖縄でのスキューバーダイビングとかクルージング
   とかも出来るって事?

(川渡し人足):はい、勿論でございます、ただ注意点がございまして天国には何百年いても構いませんが、ご友人、ご家族、恋人、など現世で繋がった人との再開は現世でしか出来ません。
   (遭難者):え!?そうなの?
(川渡し人足):はい、皆様よく勘違いされるのですが、天国でどれだけ待っていても、現世で通じた人と合う事は永遠に叶いません、天国というのは貴方を中心にした貴方の為の世界でございますので、貴方以外の別の人格が存在する事も、また入る事も出来無いのです。
   (遭難者):へ~そうなんだ…。
(川渡し人足):但し、申告すればいつでも、それまでの記憶を全て消してから、現世へ生まれ変わる事が出来ます。
   (遭難者):え!?そうなんだ…。
(川渡し人足):はい、タイミングさえ合えば現世での繋がりを継続出来る出会いがあるでしょう…。
   (遭難者):そっか…なんだ…そうゆう事か…まぁでもどの道生まれ変われるな
   ら、こんな所にぐだぐだいてもしょうがないし…川越し人さん、あの…俺を天国ま
   で連れてって下さい!
(川渡し人足):はい、かしこまりました…では六文になります…。
   (遭難者):…ろ…六文…?
(川渡し人足):はい、六文になります。

   (遭難者):確かお金ですよね?昔の…。
(川渡し人足):んっと…昔から三途の川の渡り賃は六文でございますが…。
   (遭難者):そうですか…あの…さっきも言ったんですけど今財布が無くて…。
(川渡し人足):そうですか…では…お手を拝借…。
   (遭難者):手を出せばいいんですか?
(川渡し人足):はい、私の手を握って下さい。

   (遭難者):…分かりました。(遭難者が川越し人足と握手をする)
(川渡し人足):有難う御座います…今貴方の生前の預貯金額を調べました…。
   (遭難者):え!?そんな事出来るんですか!?
(川渡し人足):はい、19万7千円ですか…。
   (遭難者):はい、多分そのくらいだったと思います…。
(川渡し人足):これでは全然足りませんね…。
   (遭難者):は…?
(川渡し人足):貴方の時代と国の通貨価値に換算致しますと、こちらでの1文は…大体…そうですね、1億円です。
   (遭難者):1文が…1億円?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):たっっっか!?なら6文で6億円いるって事ですか!?
(川渡し人足):そうなります…。

   (遭難者):はぁ!?何言ってんですか?そんな大金生前でも持ってないですよ!
(川渡し人足):そうですか…六文銭を持っていない方の場合は生前での財産しか無いのですが…それは困りましたね…そうなりますと天国まで渡らせる事は出来ません…。
   (遭難者):てゆうか、生前の貯金額って関係あるんですか!?
(川渡し人足):はい…皆さんそこも勘違いされてる方が多いのですが、よく現世では死んだら、お金はあの世へ持っていけないと言われてるみたいで…。
   (遭難者):まぁ常識っていうか、そりゃそうですよ。
(川渡し人足):実は全然持って行けるんです。むしろあの世でも物を言うのは、生前に築き上げた財産なのです…。
   (遭難者):は!?えっ!?
(川渡し人足):まぁ天国に行けさえすればあとはどの方も同じので、今の時代の貴方の生前に生きた国ですと、6億円ほどの預貯金や財産があればそれで事足りたのですが…。
   (遭難者):そんな!?6億なんて大金死ぬ前に持ってない人がほとんどですよ!
(川渡し人足):まぁ…それもそうですよね…ただ掟と言うか、決まり事ですので、こればっかりはどうしようも無いです…。
   (遭難者):じゃあ…僕はこれからどうすればいいんですか!?
(川渡し人足):ここから先の道はあと2つ御座います…。
   (遭難者):教えて下さい!
(川渡し人足):1つ目は地獄です。
   (遭難者):地獄…?
(川渡し人足):この川を川下に向かって2~3日歩くと、鍵のかかった鉄の扉に閉ざされた、地下深くに続く階段が御座います、地獄へはそこから歩いて行けます、鍵の番号は地獄で459です。
   (遭難者):459…ダイヤル式なんですか…!?


(川渡し人足):はい、一度入ると勝手に鍵が掛かる為、こちらへ引き返す事は二度と出来ません。
   (遭難者):ち、因みに、地獄とはどうゆう所なんでしょうか?
(川渡し人足):生前の貴方の国ですと、よくお寺とかで見る地獄を写した絵などがなかったでしょうか?
   (遭難者):あ!はい、見た事あります!金棒持った鬼に追いかけられたり、針の
   山を歩かされたり、煮えたぎるお湯の窯に入れられたり!火炙りにされたり!
(川渡し人足):ありますよね!大体それと同じです!

   (遭難者):えぇ…嘘…ああうわ~!同じなんだ!…やっぱそうか~!…何となく
   天国がイメージ通りだったからもしやとか思ってたんだけど…。
(川渡し人足):一度地獄に落ちると現世へ生まれ変わる事は無く、死ぬ事も無く、永久に苦しみ続ける事になります。
   (遭難者):いや誰がそんなとこ行くんですか!?
(川渡し人足):確かに鬼と喧嘩したいと言う武闘派な方や、命知らずの元死刑囚などじゃない限り行こうとしませんね…。
   (遭難者):よく分かんないですけどそんな人でも、絶対鬼とかには勝てませんよ
   ね!?
(川渡し人足):はい…聞いた話ですと鬼の握力は左手が100kg…。
   (遭難者):うわ怖っ!絶対無理だよ!!
(川渡し人足):右手が1兆tと言われています。
   (遭難者):1兆t!?いや100kgも凄いですけど結構右と左で差が激しいです
   ね…鬼は右利きなんですか?
(川渡し人足):大体鬼は右利きです。
   (遭難者):そうなんだ…初めて知りました…。
(川渡し人足):あと…大体B型です。
   (遭難者):血液型とかあるんですか!?…分かりました!もう絶対地獄は無理だ
   って分かったんで、もう一つの道はどんな場所なんですか?
(川渡し人足):もう一つの道は、ある労働施設に繋がっております。
   (遭難者):労働施設…?
(川渡し人足):そこでは生前に貯められ無かったお金を稼ぐ事が出来ます、無事に6億円貯めて頂き、こちらまで戻って来て頂ければ、天国にお連れ出来ます。
   (遭難者):え!?仕事をして6億貯めるって事ですか!?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):えぇ!?どんな仕事なんですか!?
(川渡し人足):私が見た限りなのですが…ただひたすらに土や石や砂利をがさ袋に詰めて、上へ下へと階段や坂道などを担いで運ぶだけの、ただそれだけの仕事でございます。
   (遭難者):なんですかその人力重労働!?…あの…俺…大学でプログラミング覚
   えて、今までにアプリも何個か作ってて、就職先もIT企業で、エンジニアになる筈
   だったんです!パソコンとかって無いんですか!?
(川渡し人足):はい、パソコンは御座いませんので、恐らくそのご経験はあまり活かせないかと思います。
   (遭難者):そんな…。
(川渡し人足):見た感じは肉体のみで、個性などはほとんど必要無い環境の様に思われます。
   (遭難者):あの…そこでは一体何をしてるんですか!?
(川渡し人足):そこは天国へと繋ぐ、ある巨大な塔の建設場でございます。

   (遭難者):天国へ繋ぐ、巨大な塔?なんですかそれ!?
(川渡し人足):20万年前からこの三途の川が流れている場所と天国を自由に行き来きする為に作られている、塔でございます…。
   (遭難者):この場所と天国を行き来できる塔…!?それを20万年前から作っててまだ完成してないんですか!?
(川渡し人足):はい、天国はここから10万kmの上空にありますので、その高さ故に建設が遅れているのと…あと…。
   (遭難者):と?…あとなんか他にあるんですか?
(川渡し人足):実は設計や現場の指揮管は全て地獄から派遣された鬼がやっておりまして…。
   (遭難者):え!?鬼がいるんですか!?
(川渡し人足):はい、実は地獄へ行ってしまった人間のたった一つの救済措置として、その労働施設へは唯一地獄からでも人や鬼が行く事が可能となっております。
   (遭難者):地獄からも人が来るんですか!?
(川渡し人足):はい、ですので一度地獄に行った武闘派の方も鬼に負けてよく来るみたいです。
   (遭難者):え…?うわ…こわ…。
(川渡し人足):鬼の方はとても頭が悪く、建築など基本的に何も分かって無い為、よくその塔が崩れてしまうそうです…。

   (遭難者):それじゃ頑張っても全部無駄じゃん…。
(川渡し人足):但し労働施設では、逆らわない限り鬼から暴力を振るわれる事は無いのでご安心下さい。
   (遭難者):でも、もうそんなの、ほぼ奴隷じゃないですか…。
(川渡し人足):私も大変心苦しいですが、亡くなって棺桶に入る際に、遺族に六文銭を持たされず、なおかつ生前に財産も築けなかった方が天国に行くにはもうこの方法しか無いのです…。
   (遭難者):そんな…。
(川渡し人足):先日も亡くなった方を連れて行く際に見てしまったのですが、男はもちろん、女性や、子供までもただひたすら、がさ袋に、砂や砂利や石を詰めて、来る日も来る日も階段や坂道を往復してました…。

   (遭難者):え…?
(川渡し人足):たまに自分は生前、経営者だったり、大学講師だったり、建築技師だったりしたからもっとうまく人を使えるし、ピラミッドもうまく作れるから、自分に監督をやらせて欲しいと言ったりする者もおりますが、鬼はただ一言だけ、「黙って運べ」としか言いません。
   (遭難者):なんでだよ!それで、崩れるんだろ…ちょっとは意見取り入れろよ!
(川渡し人足):はい、それで崩れた時は、「ちくしょーまたか…」としか言いません。
   (遭難者):言う事決まってんだな…。
(川渡し人足):鬼は人間の工夫とか、効率良くみたいな考え方を最も嫌います。

   (遭難者):何でだよ…もっと真面目にやれよ!
(川渡し人足):いや鬼はとても真面目なんです!でも馬鹿だから分からないんです!ですので絶対に逆らえない、頑張ってる馬鹿な上司がいる職場と考えて頂ければ分かりやすいと思います。
   (遭難者):最悪じゃねーかよ!…で…そこで俺はどれだけ働けばいいんだよ!?
(川渡し人足):そうですね…大体50年で1億円稼げると聞いてますので、300年もあれば確実に6億円貯まるでしょう。
   (遭難者):…は?さ、300年間も?そんな、労働施設に…?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):皆そうなの?
(川渡し人足):はい…ですが金額は生まれた国や環境で変わります。
   (遭難者):どうゆう事!?
(川渡し人足):一概には言えませんが、生前物価の安い、もっと貧しい国などで生まれ育ったのであれば、貴方の国の通貨だと、6万円くらいの方もいます…。

   (遭難者):生まれた国の物価で、そんなに変わるのか…?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):そ…そんな…そうか…ちくしょう!そうゆう事か!俺は生前、自分
   が住んでた国に生まれた幸せさえも、当然の事の様に感じて、貧しい国で生まれた
   人の事なんて全く考えた事なんて無かったけど…そりゃそうだよな…どっかで必ず
   ツケが回って来るよな…もう分かったよ…その労働施設で…300年…俺…頑張っ
   て…働くよ…。
(川渡し人足):分かりました、ただ一度だけ貴方が入ってきた後ろの方にあるドアを引いてみて下さい。
   (遭難者):ドア?あ…確かに俺が歩いて来た方向になんかある…。

(川渡し人足):貴方はあそこから入って来て、すぐに気絶しまったんですよ。
   (遭難者):そっか…よく覚えて無いけどそうだったのか…あそこまで戻ってあの
   ドアを開ければいいの?
(川渡し人足):はい…。


   (ドアまで移動する)


   (遭難者):ドアまで来たけど…ガチャ…あれ?開いた…うわ…中真っ暗だ…すい
   ません…ドア開きましたけど…。
(川渡し人足):え!?そうですか!?なんだ良かった!たまにいるんですよ!まだ肉体は死んでないのに、魂だけここまで来てしまう人が!
   (遭難者):え?って事は…?
(川渡し人足):もしかしたら、今ならまだ下界に戻れるかもしれません!
   (遭難者):え?そうゆう事なんですか?でも中真っ暗ですよ?
(川渡し人足):はい、戻りたいのであれば、その暗闇の中に飛び込んでみて下さい!
   (遭難者):ここに…飛び込むんですか!?
(川渡し人足):はいそうです、もし下界へ戻れたら、また今度合う日まで、今の気持ちを忘れずに頑張って下さい。
   (遭難者):…分かりましたよ…戻れたら今度は6億と言わず600億くらい貯め
   てここに来ますよ!
(川渡し人足):はい、楽しみにしております…。




終わり。