オリジナルコントのブログ

オリジナルコントの脚本

コント 復讐

ボケ:三段落下がる行  ツッコミ:通常の段落の行  ()内は動き、擬音の表現


舞台、設定:夜中、雨の中を黒いレインコートを着た男が大きな屋敷の前で立っている。


   レインコートの男(ボケ):やっと…やっとここまで来た…ここにあいつがいるの
   か…。思い返せばこれまで本当に…本当に長かった…。でも今日で全てが終わる…
   あいつだけは…あいつだけは生かしておいては駄目だ…絶対に許さない…。この手
   で俺が…出来る限り苦しめて…こ、殺してやるっ…。(ぎー♪、ドアを開ける)

教授(ツッコミ):(椅子に座っている)
   おい…おい!こっちむけ!
ん?君は…(椅子を反転させ向かい合う)
   おい!俺が聞いた事だけ答えろ…。
なんだ?
   お前オオヤマ教授だろ…?

だったら何だ…?
   だったら何だだと?…お前俺の事、覚えているか…。
何度も言わせるな、覚えていたら何だ?
   俺は…俺はお前に復讐しに来た!…あの時の恨みを晴らす為にお前をこの手で殺し
   に来たんだ!!
…ふー…やっと来てくれたか…。
   は!?何言ってる?おい!分かるか?本物のナイフだ、これで確実に殺せる!
…ずいぶん待ったよ…。
   動くな!お前だけは…お前だけは絶対にゆるさねぇ!…体中刺しまくって少しずつ
   苦しめてから、殺してやる!(ナイフを向ける)

…まったくもう…。
   おい聞けよ!待ったってなんだ?さっきから何言っている!?それよりどうだ、怖
   いか!どうした?それとも怖すぎて命乞いも出来ないのかっ!?(ナイフを向け
   る)
分かったからとりあえず靴を脱ぎなさい。
   うるせぇー!!最後に念仏でもお祈りでもさせてやる時間くらいはあるぞ!!
君の名前は確か…五郎君だったな。
   お前俺の事…覚えてたのか…?
覚えてるも何も…。
   俺はずっとあんたの事を殺したい程憎んできたけど、成人してからあんたと合うの
   は初めてだったよな!
そんなことはないよ…。
   いや、大人になってからは初めての筈だ!そんでも子供の時の…あの頃からあんた
   の顔は1日だって忘れた事なんて無かったぜ!!
だからそんな事無いってば…。
   そんな事無いだ?
そうだ…。
   だいたいなんだ…さっきからあんた何かおかしいぞ!這いつくばって地面に顔こす
   りつけて土下座して謝ればせっかく楽に殺してやろーと思ってたのによ!なんか妙
   に落ち着きやがって…思ってた感じとちげ-ぜ!何なんだよてめー!!(ナイフを
   向ける)
そもそも君さ…何で僕の事を殺したいの?
   …んっ?
何で僕を殺したいのって。
   それはお前っ…あれ?
例えば僕に君がなにかされたとか、大切な人になにかされたとか、普通動機があるじゃない?僕を殺しに来たんだからさ。
   …あれ?あれ?…
無いのかい…?
   …あれ…ちょっと待て…えっと…何でだっけ?
あっはっはっはっはっは(笑う)
   てめっ笑ってんじゃねーぞ!!
…いや失礼、その理由は簡単だよ…。
   黙れ!勝手にべらべら喋ってんじゃねー!
だって僕が君を作ったんだから…。
   …は!?お前が俺を作った?
そうだ…。
   あーはっはっはっはっは!(笑う)恐怖のあまりとち狂ってんのか、逃げる口実か
   なにか知らねーが、何訳わかんね-事言ってやがんだてめーわよ!!
信じられないかもしれないが…君は僕が作った…ロボット兵器なんだよ…。
   は…!?ろ…ロボット!?兵器…?お、俺が…!?
そうだ、君は殺人ロボット兵器なんだ…。

   殺人…ロボット…兵器?そ、そんな訳無いだろ!この期に及んで何ふざけた事ぬか
   してんだ!!
ならさ、子供の頃の思い出とかなんでもいいから話して見なさい。
   子供の頃の思い出…子供の頃の思い出…(ぶつぶつ言う)い…いくつくらいの  
   だ…!?
いくつでもいいよ、学校の思い出とか、家庭の思い出とか、いろいろあるだろ?
   こ、子供の頃からずっとお前を恨んで来た…そんで…あれ…あれ…!?何でだ!?
   言われてみると、あんたを恨んでた記憶以外なぜか全く思い出せない…あれっ…な
   んで…?
暗殺ロボットに幼少期の記憶も暗殺する動機も不要だからね…。
   えっ?…はっ…?
僕がプログラムしなかった事は、君の記憶には存在しないのだよ…。
   は?…えっ…?
例えばこれは何だね?(ハサミを出す)
   は、ハサミだ…。

そうだ、どんな時に使う?
   紙を切る時に…。
そうだ紙を切る道具だ…じゃあ一番最初にハサミを使ったのはどんな時だったか覚えているか?
   一番最初は確か…あれ…あれ…えっと…あれ、いつだっけ…?
なら最近はどんな時に使った?
   あれ…あれ…最近いつ使ったっけ…あれ…なんか…思い出せない…。
使った記憶は無いのに使い方は知っている、僕がプログラミングした証拠だ。
   な、何言ってんだてめー!(ナイフを向ける)
普段使う可能性のある日用品の使い方はあらかじめプログラムしている。
   はぁ!?
両親の名前は?
   …し、しらない!
兄弟の名前は?
   お、俺に兄弟はいない!
親戚とか友人の名前も分からないか?
   友人はたしか…あれ…あれ…思い出せない…?

学生時代に通ってた学校の名前は?
   確か…えっと…あれ…?どこだったっけ?あれ?ボルダリング教室には3ヶ月位行
   ってたんだけど…。
そんな学生時代おかしいだろ…。
   そんな…そんな…そんな…はぁ…はぁ…はぁ…うそだ…嘘だーー!!(自分の体を
   触る)
外見は人間そっくりに作ってあるから、分解してみないと君にだって自分がロボットなのか全くわからない。
   この俺が…殺人…兵器…?
そうだ…自分を人間だと思ってた様だが君は、暗殺対象者の画像データをインプットして、殺すまで永久に追い続ける人形暗殺ロボットの兵器なんだ…。
   そんな…そんな…?
対象者を殺害する以外の過去のデータは基本的に存在しない…。
   なんで…うそだろ…?
私はこの時を待ちわびてたぞ…。
   な、何だとっ!
ずっと待っていた…君が私を殺しに来るのを…。
   今の言葉、冗談じゃ済まねーぞおいっ!(ナイフを向ける)
私はある国に組織された軍事兵器開発研究所の総責任者だった。
   軍事兵器開発の総責任者…?

君が私を暗殺出来れば、無事に実験は成功だった…暗殺対象者の画像をインプットするだけで24時間365日、殺すまで永久に追い詰める究極の暗殺兵器の完成だったのに…。
   そんな事…ほんとにあるのかよ…?
君寝た事無いだろ?
   寝るってなんだ?
寝るって目をつぶってこう休む事だ。(寝る仕草する)
   あれか!あれなんでみんな何時間もやってんだ!?
ほらな…トイレだって食事だって本当は何でするのかよく分かってなかったんじゃないのか?
   …くそっ…うるせーよ!
でも外見は人間にしか見えないから、そんな兵器が存在する事自体、敵組織には分からない。
   …それで兵器実験の為にわざわざ自分を暗殺の対象にしたってのか!?
まぁ科学者としてはさすがに、実験段階で自分以外の人間を対象にする訳にはいかなかったからな…。
   命なんていらねぇってのかよ!
国家の為に命を捨てる覚悟ならとっくの昔に出来ている…。

   ちくしょー!あんたに対するこの猛烈な殺意は、ただの…ただのプログラミングだ
   って言うのかよ!!
そうだ、さっき君いろいろなんか言ってたけど、具体的な理由なんて1つも無かっただろ。
   おい…俺は、俺はお前を殺したら一体どうなるんだ!?
目的を果たせば電源が止まり、肉体は微生物によって分解され消滅する、ロボットと言っても君の体の約9割は有機物で出来ているからな。
   そんな…そんな…。
任務失敗もしくは敵組織に回収された際の機密保持の為だ。
   ちきしょーーーー!!!!
…本当に申しわけないが、実は私はこの光景も、もう見飽きたんだ…。
   見飽きただ!?
ああ、暗殺ロボットは君で5番目なんだ。
   5番目…?
20年前10兆円を投じた国家プロジェクトとして、我々組織は5体の暗殺ロボットを作って、私を殺すようにプログラムした後、ランダムに国外へ解き放った。
   そんな!?俺以外の他にもう4体もいるってのか?
ああ、そうだ。
   その4体は今どうしてる?
4体とも19年前に私のもとに無事たどり着いた…。
   え?…じゅ、19年前…!?ずいぶん昔の話じゃね-か!
お前だけ20年間も一体どこで何をしてた?
   え…お…俺はずっとあんたを追って…。
時間かかり過ぎじゃないのか?他の4体は1年以内にちゃんと来たぞ!
   えっ!?
なんでお前だけ20年もかかってるんだ…!?
   そんな…。
あとどんな環境下でも暗殺を遂行出来るように、武器の類は5体とも最初から持たせなかった…暗殺に使う武器くらいは自分で調達して欲しかったんだ…。
   それがなんだ!?
ナイフって…。
   は?
しかもダガーみたいなちょっと変な感じの奴だし…。
   いいだろ別に!
他4体はライフルとかマシンガンとかスティンガーミサイルとかしっかりした奴ちゃんと持ってたぞ!!

   う、うるせぇー!!
5体にはそれぞれ特徴があった…中でもお前の特徴は憎しみだ…、暗殺対象者に常に過剰な憎しみの感情を抱くようにプログラムした。
   くそっ…それでかっ!
その結果が暗殺対象者にたどり着くまでのこの遅さか…今更だが貴重なデータだ…。
   そっちこそ!その19年前に4体もたどり着いたのに、何でテメーはまだ生きてん
   だよ!
気づいたか…まぁ早い話が4体ともお前と同じく欠陥品だったからだ。
   ふっはっはっはっはっは!(笑う)笑えるぜ!大金使って、殺人マシーンを作った
   割には全部欠陥品とはなっ!
4体とも待っていたんだ…。
   は?何を待ってたんだよ!?
君だよ…。
   は?
4体にとってはまぁ君は弟みたいな存在だからか、待ってたんだよ…ずっと君が来るのを…全く、余計な事を覚えやがって…。
   余計な事を覚えた…?
サイボーグには5体とも人工知能が付いている、恐らくこれが失敗の原因だろう…。
   人工知能…?
殺人兵器としての能力と、任務遂行の意思だけをインプットすれば、恐らくこんな事にはならなかった筈だ…。
   自分で作っておいて今更何言ってんだっ!!
黙れ!…お前らのせいで研究所は閉鎖!新兵器開発のプロジェクトも終わっちまったじゃねーかばかやろーーがっ!!
   急に何だよ、俺のせいじゃねーだろ!
一番殺意の有ったお前がすぐ来てればよっ!クソがっ!!
   しょうがね-だろ!ナイフが全然手に入んなかったんだから!
ナイフなんて一番すぐ手に入るだろ!何年かかってんだよ馬鹿が!
   だったらもっとちゃんと優秀に作れよ!
変な形のナイフだしさ…

しかもここに来てまで殺そうかどうしようか、ぐだぐだ迷ってんじゃね-よ!
   うるっせーよ!お前もうほんとマジで殺すからな!(ナイフを向ける)
どいつもこいつも人間っぽさとか、情とか覚えてんじゃね-よ!所詮殺人兵器のくせによ!
   おい…あんた最低だよ…他のサイボーグ達は今どうしてんだよ!?
…君の事を待つと言う選択が人工知能に任務失敗とみなされ4体とも消滅したんだ。
   そんな…それ…マジかよ…。
あーああ…私の人生を賭けた大プロジェクトもこれで本当におしまいだ…。
   それ本当なのかよ!
なにがだ?
  ほ、ほんとはよ…自分を作った人間を殺したくないって…人工知能が判断したんじゃね-のかよ…。
  人工知能が?…そんな…ありえない…。
どうしてそう言えんだよっ!
   人間の頭脳をも超える最先端の人工知能が、そんな事考える訳ないだろ…。
それは逆だろ!人間を超えるんなら、人間が想像もしない感情が芽生えたっておかしくない筈だ!
  そんな…人工知能が私のプログラミングを勝手に書き換えて、任務を拒否したと…?
そうだ…。
  ならお前はどうだ?お前はこの20年間で何を学んだと言うんだ!
俺はこの20間で覚えた事は…
  なんだ!?
ボルダリングのコツは壁を掴んでる手をたまに変えて疲労を回復させるって事だ!!

  それは確かに想定外だ…。                  



終わり。