オリジナルコントのブログ

オリジナルコントの脚本

漫才 ミステリー作家になりたい!


 ボケ:三段落下がる行 ツッコミ:通常の段落の行 ()内は動きの説明、擬音の表現



   ボケ:お前さ漫才師になってなかったら、他にどんな仕事してみたかったなぁとか
   思ってた期間ってどのぐらいの時期だった?
ツッコミ:なんだよその聞き方!まぁそうだな中学校くらいまではプロ野球選手に憧れてたかな。
   ボケ:そうかなら高校入学したぐらいで現実が見えて、諦めた感じか…。
ツッコミ:嫌な言い方すんなよ!お前は漫才やってなかったら何やってんだよ!
   ボケ:俺はさ、今もなんだけどずっとミステリー作家になってみたかったんだよ。
ツッコミ:ミステリー作家?殺人事件とか起きる小説のやつ?
   ボケ:そうそう!よく知ってんじゃん!
ツッコミ:じゃあ作家で言うと例えば東野圭吾さんとか宮部みゆきさんとかか?
   ボケ:えっと…ごめん誰そいつら?
ツッコミ:いやお前ミステリー作家になりたいのに、知らねーのかよ!めちゃくちゃ有名だぞ!
   ボケ:まぁ先入観無しでピュアでいたいって感じ?
ツッコミ:何がだよ?
   ボケ:だからあんまり影響受けたくないから、ミステリー小説だけは逆に読まない
   んだよ…。
ツッコミ:お前他の小説も読まないだろ!読まないで、どうやって書くんだよ!
   ボケ:まあだからさ、とりあえず俺がオリジナルティ溢れるアイデアを元に考えた
   話を、今から話すからお前に聞いてもらって、小説として出版出来るかどうかを判
   断してもらいたいんだよ!
ツッコミ:オリジナルティ溢れるかぁ…まぁいいよ分かったよ。
   ボケ:ありがとう!まず、殺人事件の舞台は山奥の吹雪に閉ざされたペンションな
   んだよ。
ツッコミ:めちゃめちゃ影響受けてんじゃねーかよ!
   ボケ:…何が?
ツッコミ:割と良く聞く設定じゃんかよそれ!
   ボケ:そうか、まぁ読んでないから逆にかぶっちゃうのかもな…。
ツッコミ:ほんとかよ。
   ボケ:それで急に吹雪になって、しかも、そのペンションと街を繋ぐたった1本の
   橋が何者かによって燃やされて落とされちゃってさ、絶海の孤島状態でぺンション
   から帰れなくなっちゃうんだよ!
ツッコミ:え…!?
   ボケ:あのワンピースのエニエスロビーみたいな感じ。
ツッコミ:どんな場所にペンション立ててんだよ!
   ボケ:あと固定電話の電話線も犯人によって切られちゃうから、一切外部に連絡で
   きなくなっちゃうんだよ。
ツッコミ:ああじゃあ、携帯も繋がらないんだ…。
   ボケ:携帯…携帯かぁ…携帯があったかぁ…。(落ち込む)
ツッコミ:ええっ!!忘れてたの?
   ボケ:しまった…。
ツッコミ:普通に雪山なんだし、携帯電話は圏外で繋がらない設定でいいんじゃない?
   ボケ:ああ!そっか!そうだな!なるほどね!
ツッコミ:ちょっと初っ端から大丈夫か!?
   ボケ:でたまたまスキーとか温泉とかで旅行に来ていた人達が、同じペンションに
   泊まる事になってそこで血塗られた4件の連続殺人事件が起きるんだよ!!
ツッコミ:4件って結構壮大な話しなんだな…。
   ボケ:登場人物の一人目は50代の男でこいつは悪どい金融業で成り上がった、い
   わゆる評判の悪い成金社長なんだよ。
ツッコミ:ほうほう。
   ボケ:温泉旅行で来てたんだけど、まぁ普段から恨みを沢山買ってんだよな。
ツッコミ:なるほどね。
   ボケ:「何!?吹雪で帰れへんやと!?ふざけるな!電話も出来へんなんてそんな
   話し聞いてないわ!わしが1日何百億動かしてるか分かっとるのか!!」って怒鳴
   っちゃうんだよ。
ツッコミ:ああはいはい良くいるね、そうゆうアクシデントに弱くて偉そうな奴。
   ボケ:500億ベトナムドンやぞ!
ツッコミ:なにそれ聞いたこと無い通貨!!…でもまぁ大抵そうゆう奴が1番最初に殺されるんだよな…。
   ボケ:え!?…なんで分かったの?
ツッコミ:うそ…ごめん当たってた?
   ボケ:お前知らない間にまさか…俺の小説読んだのか?
ツッコミ:読んでないよ!てゆうか隠れて書いてたのかよ!
   ボケ:次の登場人物が3人とも40代の男で、仲のいい三つ子ね。
ツッコミ:仲のいい三つ子?
   ボケ:まあ外からは仲が良いって評判なんだけど、実は長男には奥単位の借金があ
   ってさ、次男は奥さんと別居状態にあって、最後の三男の頭には10円ハゲがあっ
   て、その事で悩んでるんだよ。
ツッコミ:ほうほう。
   ボケ:で今回は温泉旅行がてら三男の10円ハゲについて、ちゃんと兄弟で話し合
   う為にこのペンションに来たんだよ。
ツッコミ:いや10円ハゲが一番どうでも良いだろ!
   ボケ:そうか?…だからまあ一見仲良さそうでも実はあんまりそうでもない、三つ
   子なんだよ。
ツッコミ:ちょっと複雑なんだな…。
   ボケ:であと大手建設会社の役員の60代の男が来ていて、こいつはこのペンショ
   ンがある土地を買収しようと実は裏で企んでるんだよ。
ツッコミ:ほうほうなるほど。
   ボケ:で最後にこの5人がお世話になるペンションのオーナーが1人いて、このオ
   ーナーは過去の何かしらの出来事で心に深い傷を追ってて、その傷をつけた原因の
   人物が今回の宿泊者の中に実はいるんだよ。
ツッコミ:ほうほう、でそのオーナーはどんな人なの?
   ボケ:ペンションのオーナーは50代の男だよ。
ツッコミ:おっさんばっかじゃね-かよ!さっきから聞いてればよ!誰がそんなむさ苦しい小説読むんだよ!
   ボケ:まぁ、確かに登場人物は全員おっさんなんだけど、トリックがもう凄いから
   さ!
ツッコミ:それに登場人物6人で4人殺されたら、最後2人しか残んないじゃね-かよ!
   ボケ:何が?
ツッコミ:最後2人なら犯人じゃ無い方は犯人分かるじゃん!
   ボケ:…何言ってるかよく分からないけど、お前が今まで見てきたどの小説とも根
   底から違うから、一緒の感覚で見ないでくれよ!!
ツッコミ:え?…俺が間違ってんのか…?
   ボケ:お前が言った通り最初に言った偉そうな金融業の社長がまず、露天風呂の湯
   船の中で殺されちゃうんだよ。
ツッコミ:マジか…で死因は?
   ボケ:なんだと思う?
ツッコミ:え?…感電死とか?
   ボケ:え…嘘…また?…なんでわかったの?
ツッコミ:いやほんとごめん…そんなつもりは…。
   ボケ:ほんとに言ってくれれば読ませてやるから勝手に読むなよ!
ツッコミ:読んでないよ!なんかさっきからずっとどっかで聞いた感じがするんだよ。
   ボケ:そんな訳無いだろ!〇〇先生の全編オリジナル描き下ろしなんだから!
ツッコミ:自分の事先生って言うなよ!まぁでもなんにも見てないのにそれだけ考えられたら逆に凄いよ…。
   ボケ:で、この殺人がまさに前代未聞、奇々怪々、奇妙奇天烈、摩訶不思議、奇想
   天外、四捨五入、出前迅速、落書き無用な、不可能犯罪なんだよ!
ツッコミ:途中からドラえもんの歌入ってたけどな!おうっ!
   ボケ:ペンションから露天風呂まで続く唯一の通路のドアには鍵がかかってたんだ
   よ!つまりどうゆう事か分かるか!これはな密室殺人なんだよ!!
ツッコミ:密室殺人!?
   ボケ:そうだよ!密室殺人って知らないか?外部から侵入された痕跡が無い閉ざさ
   れた空間で起きる、一番難解な事件なんだよ!分かってんのかよ!
ツッコミ:…うん。
   ボケ:俺が探偵役だったら、参っちゃうよ!
ツッコミ:密室殺人自体は分かるんだけどさ…え?露天風呂なんでしょ?
   ボケ:そうだよ。
ツッコミ:それ密室殺人になってないんじゃない?
   ボケ:…まぁまぁ負け惜しみは後で聞くから。
ツッコミ:いや負け惜しみじゃないから!
   ボケ:どうやって密室空間を作ったか分かるか?
ツッコミ:いや、流石にそれだけだとちょっと分かんない…。
   ボケ:まず、ドアの鍵の部分にピアノ線を巻きつけるんだよ。
ツッコミ:ピアノ線を鍵に巻きつける…。
   ボケ:でそのピアノ線の一番下に氷をくくりつけて、氷はな時間が経つと溶けるだ
   ろ、それで次第に次第に氷が溶けていって自動的に鍵がガチャってかかるんだよ!
ツッコミ:え!?…ちょっと仕組みが分かんなかった、どうゆう事?
   ボケ:まぁまぁ負け惜しみは後で聞いてやるって。
ツッコミ:だからちげ-よ!
   ボケ:社長の遺体には、まずは一人目って血で書いてあるんだよ。
ツッコミ:うわっ!連続殺人の予告みたいになってるんだ。
   ボケ:そしたらその遺体を見た60代の会社役員の男が震える声で「俺は何も悪く
   ない!…俺は!何も悪くなーーい!!」って急に怯えだして、自分の部屋にこもっ
   ちゃうんだよ!
ツッコミ:やばい、そいつが次に殺されそう…。
   ボケ:…お前…やっぱり俺の部屋の机の2段目に閉まってある鍵付きのノート見た
   だろ?
ツッコミ:いや見てないよ!なに中学生女子の日記帳みたいな隠し方してんだよ!
   ボケ:お前が言ったように、次に殺されるのがこの会社役員の60代の男で死因は
   先に言うとナイフでの刺殺です。
ツッコミ:なるほど…刺殺ね…。
   ボケ:それでこれも密室殺人です。
ツッコミ:え!?これも?部屋に鍵がかかってたの?
   ボケ:勿論そうです、どうやって密室にしたのでしょう?
ツッコミ:だからそれだけじゃ分かんないよ!
   ボケ:この殺人は密室空間で、因みにしかも遠隔で殺されました。
ツッコミ:遠隔殺人って事?
   ボケ:そう、まず、ナイフにピアノ線を巻きつけて…。
ツッコミ:お前ピアノ線があれば何でも出来る訳じゃないからな?
   ボケ:で、ピアノ線を使ってナイフを天井から吊るして、吊るした根本に火をつけ
   たロウソクを灯して、だんだんロウソクが溶けて短くなるだろ?
ツッコミ:うん…。
   ボケ:それで時間が経ってある地点までロウソクが行くと火がピアノ線を燃やし
   て、ピアノ線が切れてナイフが上から落ちてきて、被害者に刺さると…それで遠隔
   で殺害したんだよ。
ツッコミ:え!?…待って!?やっぱ全然わかんない!まずなんで、その仕掛けが室内にあるのに被害者は気づかないの?
   ボケ:だから負け惜しみはもう良いんだって!
ツッコミ:違うよ!ちゃんと仕組みを聞かせて欲しいんだよ!
   ボケ:それで食事の時間になっても、被害者が下りてこないから皆不審に思って、
   ドンドンって壁を叩いて、呼び出すんだけど、死んでるから勿論応答無いんだよ。
ツッコミ:うん…。
   ボケ:それでドアをさ、皆で体当たりで壊すんだよ。
ツッコミ:それも良くあるな!うんそれで?
   ボケ:せーの!ドン!せーの!ドン!せーの!ドン!せーの!ドン!せーの!ド
   ン!せーの!ドン!せーの!ドン!せーの!ドン!せーの!ドン!せーの!ドン!
ツッコミ:全然壊れねーな!ドアっ!!
   ボケ:意外とドアって壊れないんだよ、そうこうしてるうちにオーナーが鍵持って
   来てドアが開いて…。
ツッコミ:最初っからそうしろよ!
   ボケ:それで、2番目の殺人事件が発覚するんだよ。
ツッコミ:なるほどね…。
   ボケ:実はさ、この話の探偵役はもう決まってるんだよ…結末のシーンで格好良く
   「犯人はこの中にいるぜ!」って言うんだよ。
ツッコミ:あんまり格好良く無いけど…え?探偵役は誰なの…?
   ボケ:三つ子の三男。
ツッコミ:10円ハゲの奴か!
   ボケ:実は三男はIQ53万なんだよ。
ツッコミ:フリーザ!?
   ボケ:お前さ…ミステリー小説読むんだろ?ぶっちゃけ犯人誰だと思う?
ツッコミ:…いやまだ2件しか事件起きてないから分からないよ。
   ボケ:実はあまりに壮大過ぎてさ、俺にもよく分からないんだよ。
ツッコミ:はぁ!?
   ボケ:舞台と設定は完璧なんだけど、犯人だけが俺にも分かんないんだよ…。
ツッコミ:お前に分かんなかったら、誰にも分かるわけねーじゃんかよ!
   ボケ:俺の遺作としてさ、この作品の後半部分をお前に託したいんだよ!
ツッコミ:処女作が遺作かよ!
   ボケ:マルクスがエンゲルスに資本論を託した様に、伊能忠敬が日本地図を弟子達
   に託した様に、俺も親友であるお前に途中だけどこの大作の結末とさ…。
ツッコミ:自分で大作って言うなよ!
   ボケ:あと2件のトリックをさ…お前に託したいんだよ!!
ツッコミ:こっからどうすりゃ良いんだよ!
   ボケ:まぁあと一応もう1つだけ思いついた密室殺人のトリックのネタを言うと
   さ。
ツッコミ:お前密室好きだな…。
   ボケ:まぁ3番目は毒殺なんだよ。
ツッコミ:毒殺ね、うん、で?
   ボケ:大きい氷の中に毒蛇を入れて、被害者の部屋に投げ入れて氷が溶けるのをひ
   たすら待つっていうトリックなんだけどどう?
ツッコミ:冷凍食品じゃないんだから蛇死ぬだろ!
   ボケ:なんか良いエンデイングとか思いつかない?
ツッコミ:俺に聞くなって!
   ボケ:そして全員ホモだったみたいな…。
ツッコミ:そして誰もいなくなったみたいに言うなよ!
   全部俺の妄想でしたとか…。
ツッコミ:夢落ち!?…いやまぁ小説なんて全部妄想なんだから、そこは気にしなくても良いと思うけど。
   ボケ:お前はほんとに優しいな!今度はお前の自伝を書かせてくれ!
ツッコミ:絶対やめてくれー!




終わり。

コント 遭難


  ツッコミ:三段落下がる行  ボケ:通常の段落の行  ()内は動き、擬音の表現


舞台、設定:男が寝ている。

   ツッコミ(遭難者):うわ…なんか眩しい…ん?…もう朝か?…あれ?ここ何処
   だ?家じゃない…ん?俺どうしてこんな所にいるんだっけ?…あ…そうだ思い出し
   た!…沖縄旅行に来てたんだった…ん?いや違うホテルじゃない…そうだ確か沖縄
   へ行く途中の、飛行機に乗ってて…確か…機長が「エンジントラブルが発生しまし
   た」とか急に言い出して…それで大きく機内が揺れだして…「山中に緊急着陸しま
   す」ってアナウンスが流れてから…それで凄く怖くて…でも助かったのか…あれ?
   でも他の乗客はいないしな?…墜落した衝撃で俺だけどっかに飛ばされたのか
   な?…でも体は全然痛く無いし、服も汚れてないし…変だな…ん?なんだ…?あ
   の…大きな…か…川か…?ちょっと、とりあえず、救助が来るまで水とかも確保しな
   きゃいけないし、誰かいるかも知れない…行ってみるか…。(川まで歩く)
   うわ…近くまで行くと…ずいぶん大きな川だな…対岸が見えない…湖か?…あれ…
   人がいる…やった…同じ乗客の人かな…?あの…すいません…ここって何処か分か
   りますか?
ボケ(川渡し人足):…。

   (遭難者):あ、突然すいません、ちょっと僕もよく覚えてないんですけど、乗っ
   てた飛行機が山中に不時着してしまったみたいで、それで機内からなんか投げ出さ
   れてしまったのか、自分だけこんな所に来てしまって…それでしばらく気を失って
   たみたいなんですけど、この川が向こうから見えたから来ました…。
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):何か急に色々言ってすいません…あのそれで旅行先で予約してたホテ
   ルとかにも早く連絡取りたいんですけど…スマホとか財布とか全部何処かに行っち
   ゃってて、ここの場所も分からないし…。
(川渡し人足):そうでしたか…それはお気の毒でしたね…。
   (遭難者):…あの、一番近い街ってどの辺りですか?
(川渡し人足):この辺りに街はありません。
   (遭難者):え!?そうなんですか…?そうか…じゃあ…ここって大体何処あたり
   か分かりますか?
(川渡し人足):ん~何処と言われましても…。
   (遭難者):なら…この川の名前は分かりますか?
(川渡し人足):この川は三途の川と申します…。

   (遭難者):え!?…は?
(川渡し人足):三途の川です…。
   (遭難者):三途…?
(川渡し人足):あの芸能プロダクションのサンズじゃ無くて漢数字の三に用途のとの、
 あのしんにょうに余ると書くずです。

   (遭難者):いや…分かってますよ!…え?三途の川って…え!?…おい…うそ…
   だろ…そうゆう事なの?…でも…確かに飛行機信じられないくらいめちゃくちゃ揺
   れてたし…あの状態から…全くの無傷って…ちょっと普通考えられない…それに気
   づいたら誰もいないのも変だし…不時着する直前まで見てた山中の景色とも違う
   し…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…おい…うそ…だろ…もしかして俺…死んじゃ
   ったの?…あの俺…もしかして死んじゃったんですか…?
(川渡し人足):私…川越し人足の為、下界の事はよく分かりませんが、皆さん三途の川と聞くと、なにか急に思い出されて、絶望する様な、今の貴方と同じリアクションをされます。

   (遭難者):…いやあなた下界って言っちゃってるし…そりゃ…自分が死んだ事を
   知るんだからそうだろうな…は…はは…俺…やっぱり死んじまったのか…21
   で?…はは…とうとう彼女も出来なかったし…全然やりたかった事何にも出来なか
   った…来年就職も決まってたのに…はぁ…なんか、つまんねー人生だったな…。
(川渡し人足):大丈夫ですか?
   (遭難者):大丈夫じゃ無いですよ!!え?…他の人って、皆さんどうしてるんで
   すか?
(川渡し人足):あ…そうですね、ご老人の方ですとどこか悟られていらっしゃって、すぐにこの船に乗って川を渡られる方がほとんどなんですけど、若い方は皆さんよく何日も呆然としたり、泣きわめいたりされます。

   (遭難者):でしょーね!!俺も今そうしたい気持ちを押し殺して、懸命にあんた
   と話してますよ!はぁ…俺の人生終了か…はぁ…くそ…あの飛行機にさえ乗らなけ
   れば……で?俺はこれから何処に行くんですか…?
(川渡し人足):この船で行く場所は天国と決まっております…。
   (遭難者):天国…!?

(川渡し人足):はい、天国では神様にお願いすれば好みの人物も、世界中のご馳走も、美酒も、温泉やアトラスション等の巨大レジャー施設でさえも何もかも瞬時にご用意され、現世の苦痛、苦悩を心ゆくまで癒す事が出来ます…。
   (遭難者):え!?…凄い…何でもすぐに叶うんだ…それってほんとにイメージ通
   りの天国じゃん!?でも神様に頼むってどうゆう事ですか?
(川渡し人足):紙に書いて渡すと1秒でご用意されます。
   (遭難者):紙に書いて渡すんですか…。
(川渡し人足):一蘭方式となっております。
   (遭難者):一蘭方式…そ、そうですか…でも本当に天国ってあったんだ!?…
   え!?じゃあ俺がやりたかった沖縄でのスキューバーダイビングとかクルージング
   とかも出来るって事?

(川渡し人足):はい、勿論でございます、ただ注意点がございまして天国には何百年いても構いませんが、ご友人、ご家族、恋人、など現世で繋がった人との再開は現世でしか出来ません。
   (遭難者):え!?そうなの?
(川渡し人足):はい、皆様よく勘違いされるのですが、天国でどれだけ待っていても、現世で通じた人と合う事は永遠に叶いません、天国というのは貴方を中心にした貴方の為の世界でございますので、貴方以外の別の人格が存在する事も、また入る事も出来無いのです。
   (遭難者):へ~そうなんだ…。
(川渡し人足):但し、申告すればいつでも、それまでの記憶を全て消してから、現世へ生まれ変わる事が出来ます。
   (遭難者):え!?そうなんだ…。
(川渡し人足):はい、タイミングさえ合えば現世での繋がりを継続出来る出会いがあるでしょう…。
   (遭難者):そっか…なんだ…そうゆう事か…まぁでもどの道生まれ変われるな
   ら、こんな所にぐだぐだいてもしょうがないし…川越し人さん、あの…俺を天国ま
   で連れてって下さい!
(川渡し人足):はい、かしこまりました…では六文になります…。
   (遭難者):…ろ…六文…?
(川渡し人足):はい、六文になります。

   (遭難者):確かお金ですよね?昔の…。
(川渡し人足):んっと…昔から三途の川の渡り賃は六文でございますが…。
   (遭難者):そうですか…あの…さっきも言ったんですけど今財布が無くて…。
(川渡し人足):そうですか…では…お手を拝借…。
   (遭難者):手を出せばいいんですか?
(川渡し人足):はい、私の手を握って下さい。

   (遭難者):…分かりました。(遭難者が川越し人足と握手をする)
(川渡し人足):有難う御座います…今貴方の生前の預貯金額を調べました…。
   (遭難者):え!?そんな事出来るんですか!?
(川渡し人足):はい、19万7千円ですか…。
   (遭難者):はい、多分そのくらいだったと思います…。
(川渡し人足):これでは全然足りませんね…。
   (遭難者):は…?
(川渡し人足):貴方の時代と国の通貨価値に換算致しますと、こちらでの1文は…大体…そうですね、1億円です。
   (遭難者):1文が…1億円?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):たっっっか!?なら6文で6億円いるって事ですか!?
(川渡し人足):そうなります…。

   (遭難者):はぁ!?何言ってんですか?そんな大金生前でも持ってないですよ!
(川渡し人足):そうですか…六文銭を持っていない方の場合は生前での財産しか無いのですが…それは困りましたね…そうなりますと天国まで渡らせる事は出来ません…。
   (遭難者):てゆうか、生前の貯金額って関係あるんですか!?
(川渡し人足):はい…皆さんそこも勘違いされてる方が多いのですが、よく現世では死んだら、お金はあの世へ持っていけないと言われてるみたいで…。
   (遭難者):まぁ常識っていうか、そりゃそうですよ。
(川渡し人足):実は全然持って行けるんです。むしろあの世でも物を言うのは、生前に築き上げた財産なのです…。
   (遭難者):は!?えっ!?
(川渡し人足):まぁ天国に行けさえすればあとはどの方も同じので、今の時代の貴方の生前に生きた国ですと、6億円ほどの預貯金や財産があればそれで事足りたのですが…。
   (遭難者):そんな!?6億なんて大金死ぬ前に持ってない人がほとんどですよ!
(川渡し人足):まぁ…それもそうですよね…ただ掟と言うか、決まり事ですので、こればっかりはどうしようも無いです…。
   (遭難者):じゃあ…僕はこれからどうすればいいんですか!?
(川渡し人足):ここから先の道はあと2つ御座います…。
   (遭難者):教えて下さい!
(川渡し人足):1つ目は地獄です。
   (遭難者):地獄…?
(川渡し人足):この川を川下に向かって2~3日歩くと、鍵のかかった鉄の扉に閉ざされた、地下深くに続く階段が御座います、地獄へはそこから歩いて行けます、鍵の番号は地獄で459です。
   (遭難者):459…ダイヤル式なんですか…!?


(川渡し人足):はい、一度入ると勝手に鍵が掛かる為、こちらへ引き返す事は二度と出来ません。
   (遭難者):ち、因みに、地獄とはどうゆう所なんでしょうか?
(川渡し人足):生前の貴方の国ですと、よくお寺とかで見る地獄を写した絵などがなかったでしょうか?
   (遭難者):あ!はい、見た事あります!金棒持った鬼に追いかけられたり、針の
   山を歩かされたり、煮えたぎるお湯の窯に入れられたり!火炙りにされたり!
(川渡し人足):ありますよね!大体それと同じです!

   (遭難者):えぇ…嘘…ああうわ~!同じなんだ!…やっぱそうか~!…何となく
   天国がイメージ通りだったからもしやとか思ってたんだけど…。
(川渡し人足):一度地獄に落ちると現世へ生まれ変わる事は無く、死ぬ事も無く、永久に苦しみ続ける事になります。
   (遭難者):いや誰がそんなとこ行くんですか!?
(川渡し人足):確かに鬼と喧嘩したいと言う武闘派な方や、命知らずの元死刑囚などじゃない限り行こうとしませんね…。
   (遭難者):よく分かんないですけどそんな人でも、絶対鬼とかには勝てませんよ
   ね!?
(川渡し人足):はい…聞いた話ですと鬼の握力は左手が100kg…。
   (遭難者):うわ怖っ!絶対無理だよ!!
(川渡し人足):右手が1兆tと言われています。
   (遭難者):1兆t!?いや100kgも凄いですけど結構右と左で差が激しいです
   ね…鬼は右利きなんですか?
(川渡し人足):大体鬼は右利きです。
   (遭難者):そうなんだ…初めて知りました…。
(川渡し人足):あと…大体B型です。
   (遭難者):血液型とかあるんですか!?…分かりました!もう絶対地獄は無理だ
   って分かったんで、もう一つの道はどんな場所なんですか?
(川渡し人足):もう一つの道は、ある労働施設に繋がっております。
   (遭難者):労働施設…?
(川渡し人足):そこでは生前に貯められ無かったお金を稼ぐ事が出来ます、無事に6億円貯めて頂き、こちらまで戻って来て頂ければ、天国にお連れ出来ます。
   (遭難者):え!?仕事をして6億貯めるって事ですか!?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):えぇ!?どんな仕事なんですか!?
(川渡し人足):私が見た限りなのですが…ただひたすらに土や石や砂利をがさ袋に詰めて、上へ下へと階段や坂道などを担いで運ぶだけの、ただそれだけの仕事でございます。
   (遭難者):なんですかその人力重労働!?…あの…俺…大学でプログラミング覚
   えて、今までにアプリも何個か作ってて、就職先もIT企業で、エンジニアになる筈
   だったんです!パソコンとかって無いんですか!?
(川渡し人足):はい、パソコンは御座いませんので、恐らくそのご経験はあまり活かせないかと思います。
   (遭難者):そんな…。
(川渡し人足):見た感じは肉体のみで、個性などはほとんど必要無い環境の様に思われます。
   (遭難者):あの…そこでは一体何をしてるんですか!?
(川渡し人足):そこは天国へと繋ぐ、ある巨大な塔の建設場でございます。

   (遭難者):天国へ繋ぐ、巨大な塔?なんですかそれ!?
(川渡し人足):20万年前からこの三途の川が流れている場所と天国を自由に行き来きする為に作られている、塔でございます…。
   (遭難者):この場所と天国を行き来できる塔…!?それを20万年前から作っててまだ完成してないんですか!?
(川渡し人足):はい、天国はここから10万kmの上空にありますので、その高さ故に建設が遅れているのと…あと…。
   (遭難者):と?…あとなんか他にあるんですか?
(川渡し人足):実は設計や現場の指揮管は全て地獄から派遣された鬼がやっておりまして…。
   (遭難者):え!?鬼がいるんですか!?
(川渡し人足):はい、実は地獄へ行ってしまった人間のたった一つの救済措置として、その労働施設へは唯一地獄からでも人や鬼が行く事が可能となっております。
   (遭難者):地獄からも人が来るんですか!?
(川渡し人足):はい、ですので一度地獄に行った武闘派の方も鬼に負けてよく来るみたいです。
   (遭難者):え…?うわ…こわ…。
(川渡し人足):鬼の方はとても頭が悪く、建築など基本的に何も分かって無い為、よくその塔が崩れてしまうそうです…。

   (遭難者):それじゃ頑張っても全部無駄じゃん…。
(川渡し人足):但し労働施設では、逆らわない限り鬼から暴力を振るわれる事は無いのでご安心下さい。
   (遭難者):でも、もうそんなの、ほぼ奴隷じゃないですか…。
(川渡し人足):私も大変心苦しいですが、亡くなって棺桶に入る際に、遺族に六文銭を持たされず、なおかつ生前に財産も築けなかった方が天国に行くにはもうこの方法しか無いのです…。
   (遭難者):そんな…。
(川渡し人足):先日も亡くなった方を連れて行く際に見てしまったのですが、男はもちろん、女性や、子供までもただひたすら、がさ袋に、砂や砂利や石を詰めて、来る日も来る日も階段や坂道を往復してました…。

   (遭難者):え…?
(川渡し人足):たまに自分は生前、経営者だったり、大学講師だったり、建築技師だったりしたからもっとうまく人を使えるし、ピラミッドもうまく作れるから、自分に監督をやらせて欲しいと言ったりする者もおりますが、鬼はただ一言だけ、「黙って運べ」としか言いません。
   (遭難者):なんでだよ!それで、崩れるんだろ…ちょっとは意見取り入れろよ!
(川渡し人足):はい、それで崩れた時は、「ちくしょーまたか…」としか言いません。
   (遭難者):言う事決まってんだな…。
(川渡し人足):鬼は人間の工夫とか、効率良くみたいな考え方を最も嫌います。

   (遭難者):何でだよ…もっと真面目にやれよ!
(川渡し人足):いや鬼はとても真面目なんです!でも馬鹿だから分からないんです!ですので絶対に逆らえない、頑張ってる馬鹿な上司がいる職場と考えて頂ければ分かりやすいと思います。
   (遭難者):最悪じゃねーかよ!…で…そこで俺はどれだけ働けばいいんだよ!?
(川渡し人足):そうですね…大体50年で1億円稼げると聞いてますので、300年もあれば確実に6億円貯まるでしょう。
   (遭難者):…は?さ、300年間も?そんな、労働施設に…?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):皆そうなの?
(川渡し人足):はい…ですが金額は生まれた国や環境で変わります。
   (遭難者):どうゆう事!?
(川渡し人足):一概には言えませんが、生前物価の安い、もっと貧しい国などで生まれ育ったのであれば、貴方の国の通貨だと、6万円くらいの方もいます…。

   (遭難者):生まれた国の物価で、そんなに変わるのか…?
(川渡し人足):はい…。
   (遭難者):そ…そんな…そうか…ちくしょう!そうゆう事か!俺は生前、自分
   が住んでた国に生まれた幸せさえも、当然の事の様に感じて、貧しい国で生まれた
   人の事なんて全く考えた事なんて無かったけど…そりゃそうだよな…どっかで必ず
   ツケが回って来るよな…もう分かったよ…その労働施設で…300年…俺…頑張っ
   て…働くよ…。
(川渡し人足):分かりました、ただ一度だけ貴方が入ってきた後ろの方にあるドアを引いてみて下さい。
   (遭難者):ドア?あ…確かに俺が歩いて来た方向になんかある…。

(川渡し人足):貴方はあそこから入って来て、すぐに気絶しまったんですよ。
   (遭難者):そっか…よく覚えて無いけどそうだったのか…あそこまで戻ってあの
   ドアを開ければいいの?
(川渡し人足):はい…。


   (ドアまで移動する)


   (遭難者):ドアまで来たけど…ガチャ…あれ?開いた…うわ…中真っ暗だ…すい
   ません…ドア開きましたけど…。
(川渡し人足):え!?そうですか!?なんだ良かった!たまにいるんですよ!まだ肉体は死んでないのに、魂だけここまで来てしまう人が!
   (遭難者):え?って事は…?
(川渡し人足):もしかしたら、今ならまだ下界に戻れるかもしれません!
   (遭難者):え?そうゆう事なんですか?でも中真っ暗ですよ?
(川渡し人足):はい、戻りたいのであれば、その暗闇の中に飛び込んでみて下さい!
   (遭難者):ここに…飛び込むんですか!?
(川渡し人足):はいそうです、もし下界へ戻れたら、また今度合う日まで、今の気持ちを忘れずに頑張って下さい。
   (遭難者):…分かりましたよ…戻れたら今度は6億と言わず600億くらい貯め
   てここに来ますよ!
(川渡し人足):はい、楽しみにしております…。




終わり。

コント 沈没船


         ボケ:三段落下がる行 ツッコミ:通常の段落の行 乗員:六段下がる行 
                                                                                         ()内は動き、擬音の表現

      (乗員):もうすぐ沈没するぞー!早く救命ボートに乗れーー!!
ツッコミ(船長):おい!客は全員避難させたか?
          (乗員):はい船長!全員避難させました!あとは我々だけです!
(船長):そうか、よくやった…まさかこの…世界最大の豪華客船が処女航海で沈没するなんて…。
      (乗員):はい…非常に残念ですが恐らくはあと15分程で沈没します、早
      く船長も救命ボートにお乗り下さい!

(船長):分かった…私は船長として最後の見回りをして来る、お前は先に乗れ。
      (乗員):…分かりました、ですが船長もなるべく早くお願いしますよ。
(船長):分かってる…(甲板を見回す船長)よし…もう誰もいないな…あ、そうだ!航海日誌を船長室に忘れてきた、もしかしたら後で今回の事故の原因が詳細に分かるかもしれない…まだ時間もある…よし取りに行くか…。


      (船長が船長室まで行く:カンカンカンカン♪)

(船長):ん?…何だお前は!?
    ボケ(端臨時アルバイト):あ!船長!
(船長):その服は…下っ端船員の!…お前今回臨時で募集したアルバイトだな…。
   (臨時アルバイト):お、お疲れさまです!
(船長):お疲れ様ですじゃないだろ!こんな所で何をやってるんだ!!
   (臨時アルバイト):俺…子供の頃からずっと…船の乗組員になりたかったんです…
   この船の船員になれて俺…本当に良かったです…本当は…本当はもっともっと…こ
   の船で色んな場所へ行きたかったんですけど…。
(船長):…何言っているんだお前は!?早く救命ボートに乗りなさい!
   (臨時アルバイト):お客様はもう全員避難されたんですか?
(船長):ああ全員避難したよ!もうこの船には我々しかいないぞ!あと10分くらいで沈む、さっさと救命ボートに乗れ!!
   (臨時アルバイト):はぁ良かった…お客様は全員避難出来たんですね…。
(船長):…だから何だその考えにふけってる感じは!早く救命ボートに乗れって言ってるだろ!
   (臨時アルバイト):船長も早く逃げて下さい…。
(船長):だからお前もな!もう早くしろよ!
   (臨時アルバイト):俺は…俺は…この船と共に海の底に…沈みます…。
(船長):は!?何言ってんだお前…!?
   (臨時アルバイト):今回の事故…誰かが責任を取らなければなりません…それなら
   僕が取ります…。
(船長):いやお前が一番取らなくていいよ!
   (臨時アルバイト):今回の事故は…本当は…全部俺のせいなんです!
(船長):…ん?いやそんな事はない!お前程度のアルバイトが何かミスしたからってこの船は沈没なんかしない!
   (臨時アルバイト):いや!絶対俺のせいなんです!
(船長):分かった…分かったから落ち着いて話してみろ…お前何をしたんだ?
   (臨時アルバイト):昨日、相部屋の奴にすっきりするぞって言われて、1本だけタ
   バコもらって…それで初めて吸ってみたんです…。
(船長):おう、そうか…。
   (臨時アルバイト):通ってた学校だと、クラスの友達はほとんど吸ってたんですけ
   ど…俺だけは吸いませんでした…。
(船長):うん、それで?
   (臨時アルバイト):今朝甲板に出て、一人で吸ってたら吸い方悪かったのか、急に
   何かむせちまって。

(船長):うん…。
   (臨時アルバイト):それでなんか、ムカついて…俺…船の甲板から海に、吸い殻を
   投げ捨てちまったんです…。
(船長):うん、それで?
   (臨時アルバイト):…多分それが原因なんじゃねーのかなって…。
(船長):…嘘でしょ?全然関係ねーよ!一応聞いてみたけどかすりもしねーよ!!
   (臨時アルバイト):えぇ!?
(船長):クソゴミ見てーな話で貴重な時間使いやがってよ!
   (臨時アルバイト):そんな!?船長気使って嘘言わないで下さいよ!!
(船長):嘘じゃねーよ!吸い殻を海に捨てるって事は、まぁ別に褒められた事じゃないけど、そんなんでこんな馬鹿でかい船が沈没するかよ!
   (臨時アルバイト):…ほんとですか?
(船長):なんだよその目は!お前の疑う気持ちが理解できないよ!
   (臨時アルバイト):…はぁ…良かった…。
(船長):お前ら末端には知らされてなかったか?実は船が氷山にぶつかったのが原因なんだ!だから早くボートに乗れ!

   (臨時アルバイト):でも誰かが責任取らないと…。
(船長):取るとしても絶対お前じゃないんだよ!
   (臨時アルバイト):…え!?
(船長):どっちかって言ったら俺なんだよ!責任あるのは!!
   (臨時アルバイト):え?船長が原因なんですか?
(船長):いや俺が直接って訳じゃないけど、お前よりは確実に俺の方が責任あるだろ!
   (臨時アルバイト):…そうなんですか?
(船長):当たり前だよ!俺船長だよ!?分かってる!?
   (臨時アルバイト):そうでしたか…。
(船長):臨時雇いのアルバイトごときが責任感じる事無いんだよ!
   (臨時アルバイト):はぁ…。
(船長):逆にこっちは助かる気満々だから恥ずかしいわ!もうさっさと救命ボートに乗れよ!!
   (臨時アルバイト):…なんかこうしてると…水の音が聞こえてくる…。
(船長):その感じ鼻につくからやめろって!俺だって助かりたいけど、お前が救命ボート乗らないと俺も乗れないんだよ!
   (臨時アルバイト):一人にはさせないよ…。
(船長):何壁触って物思いにふけってんだよ!臨時雇いなんだからお前そんなにこの船に思い入れとかないだろ!!
   (臨時アルバイト):俺は…この船と共に…沈みます…。
(船長):それは船長のセリフなの!何で?お前バイトじゃん!?
   (臨時アルバイト):役職や乗ってた時間なんて関係ないですよ!
(船長):あのな…お前初めての航海なんだろ?本当はまだまだこれから沢山いろんな船に乗って、世界中を航海出来るじゃねーか!今死ぬなんてもったいないよ!
   (臨時アルバイト):でももう決めた事なんで…。
(船長):そんな事したらきっと後悔するぞ!
   (臨時アルバイト):え?もしかしてまだこの船動くんですか!?
(船長):いやその後悔じゃ無くて、悔いが残るぞって意味だよ!
   (臨時アルバイト):でも、仲間を一人で見殺しになんて出来ませんよ!
(船長):所詮物だろ!船は!
   (臨時アルバイト):俺…船には何かしらの魂が宿ると思うんです…。
(船長):最初の航海でそんなすぐに宿るかな!?それベテラン船員が言うセリフだしさ!
   (臨時アルバイト):俺…そうゆうの何となく分かるんです…。
(船長):もういいそれなら力ずくで連れてくからな!(船長が臨時アルバイトの腕を掴む)
   (臨時アルバイト):ちょっと待って!痛っ!
(船長):ん?どうした!?
   (臨時アルバイト):実は…物置に挟まれてて…。
(船長):え!?大丈夫か!?…足か!?そうか、もしかして足が物置に挟まれてて、それで抜けなくなっているのか!?おい!?
   (臨時アルバイト):ズボンが…物置に…挟まれてて…。
(船長):切れ切れ切れ切れ!!そんなズボン切るか破るかしろよ!
   (臨時アルバイト):でも初めてもらった乗組員の作業服だったんで…。
(船長):そんなもん助かったら何枚でもやるから早く切っちまえよ!
   (臨時アルバイト):ほんとですか!?
(船長):助かったら臨時のアルバイトじゃなくて、正式に乗組員として採用してやるから早く来い!
   (臨時アルバイト):分かりました!有難う御座います!(ズボンを破る)


      (2人で甲板へ出る:カンカンカンカン♪)


(船長):ほら、あそこに救命ボートがあるからお前から先に乗れ!
   (臨時アルバイト):船長ダメです!救命ボート一個しかありません!
(船長):…なに個室希望!?いいだろ一個に2人で乗れば!
   (臨時アルバイト):あの俺…寝相凄く悪いですけど大丈夫ですか?
(船長):どうでもいいよ!お前ずっとどうでもいい事しか言ってないよ!!
   (臨時アルバイト):…すいません。
(船長):こっから先も油断出来ないんだからな!いいか助かる事だけ考えろ!
   (臨時アルバイト):はい!
(船長):今回の事故はまぁ…悲しい事だったけど、これからもお前の航海はずっと続いていくんだ!こんな所で終わらせちゃダメなんだよ!
   (臨時アルバイト):はい!船長…有難う御座います!(涙ぐむ)
(船長):俺もまさかパーティを楽しんでる最中に氷山にぶつかるなんて思ってなかったからよ…。

   (臨時アルバイト):え?…今なんて言いました?
(船長):ん?だから下っ端の臨時アルバイトだけ残して、パーティで酒飲んでたんだよ…まさかそんな時に氷山にぶつかるなんてな…ついてねーよほんと…。
   (臨時アルバイト):アルバイトだけ残して、パーティで酒飲んでた!?それちょっ
   とどうゆう事ですか!?
(船長):だから臨時のアルバイトに監視もさせてたんだよ、そしたらそのバイトが居眠りしやがってよ…。
   (臨時アルバイト):は!?じゃあ船長…今回の事故…ひょっとして貴方のせいじゃ
   ないですか!?
(船長):ん?何が?
   (臨時アルバイト):今回の沈没はほとんど貴方が原因ですよ!!
(船長):…ん~?そ~かな~、俺はそんな事無いと思うけど…。
   (臨時アルバイト):うわ…こわ…!!!
(船長):…何が?
   (臨時アルバイト):うわ…何だこれ…初めてのパターンだ!…ずっと俺の方がおか
   しい奴だと思ってましたけど、これは船長の方がおかしいパターンだ!どんでん返
   しパターンだ!!
(船長):だってさぁ…パーティ…行きたいじゃん?
   (臨時アルバイト):はい!?
(船長):人が遊んでる時に働くのって俺一番嫌いなんだよね…。
   (臨時アルバイト):何言ってんですか!?
(船長):俺がパーティ行くって言ったら、他の奴らも行きたい、行きたいって、なんかぞろぞろ集まってきやがってよ…まぁ可愛そうだから連れてってやったけど、まさか臨時雇いのアルバイトに監視もさせるなんてなぁ…。
   (臨時アルバイト):あんた最低だ!そもそも船を物と言ってしまえる貴方は、船長
   になるべき人じゃ無かったんだ!!
(船長):そんな事言うなよ…せっかく助けてやったのによ…(船長がバイトの肩を掴む)
   (臨時アルバイト):やめろ離せ!助かったらあんたらの事全部告発してやる!
(船長):そんなぁ…これから救助が来るまで俺達2人で協力していかなきゃいけないんだぜ…。
   (臨時アルバイト):うるさい!お前なんかと誰が協力するか!!
(船長):告発なんてされたら困るな…おい…な!!(バイトを押し出す)
   (臨時アルバイト):わっ!わっ!やめろ!押すな!あ゛!あ゛!あ゛!
(船長):告発なんてしないよな…?
   (臨時アルバイト):わ゛!やめろ!この事だって言ってやるからな!!
(船長):やっぱお前の事…助けるんじゃ無かったわ!!(ドン♪ バイトを海に突き飛ばす)
   (臨時アルバイト):うわっーーーー!!!!(バイトが海に落ちる ボチャン♪)
たっぷりこうかいしろよ…。




終わり。