オリジナルコントのブログ

オリジナルコントの脚本

コント 報われない人


  ツッコミ:三段落下がる行  ボケ:通常の段落の行 ()内は動き、擬音の表現


  舞台、設定:おじさんが公園でゴミ拾いのボランティアをしている。


   おじさん(ボケ):全くこんなにゴミ捨てて…(公園のゴミをボランティアで片付け
   てる)うわっ!!(突然ベンチに置いていたカバンをひったくりに会う)なん
   だお前は!?…おい待て!…鞄…取られた!?ひったくりだ…はぁ…はぁ…。

   こんな朝っぱらから!?おい?嘘だろ!?…なんで…こんな事に…。
   (呆然とする)…と、とりあえず警察に…電話しよう…もしもし…ちょっと今公園
   で鞄をひったくりに会ってしまいまして…はい…そうです…財布も全部入ってま
   した…すぐ来てください…はい…待ってます。
不良娘(ツッコミ):(歩きながら空き缶をポイ捨てする)

   ん?おいちょっと君!ポイ捨てしないでよ!
は?おっさんいきなり話しかけてくんじゃねーよ!
   そのジュース見覚えあるぞ!君いつもここでポイ捨てしてるだろ!
…変な言いがかりやめろよ!
   なんですか!こっちはね…さっき…さっきひったくりに遭ったばかりで、この怒り
   が消えるならもう何でもしますよ!!
急に何言ってんだよおっさん!
   私気が小さくて普段は人に注意とか出来ないけど、今もうたがが外れちゃってるか
   ら何でもできそうな気がするよ!
だから何言ってんだよ気持ちわりーな!…わかったよ、拾えばいいんだろ。(捨てた空き缶を拾う)
   もうポイ捨てしないように!
ん?なんだこれ?あ、宝くじだ!もしかして当たってたりして。(空き缶の近くに偶然落ちていた宝くじを拾う)スマホで調べてみよっと♫

   ふん、そんなもん当たってるわけ…。
あれ?うそ!当たってる!!しかも一等だ!!!
   …え?うそでしょ!?
一等いくらだ…3億だ!うそ!マジで!やったー!!早く換金しに行こう♫
   おい!ちょっと待て!
なんだよ!
   そんなわけ無いだろ!
本当に当たってるんだって、ちょっと急ぐから話しかけないで!
   ふざけるなよ!
だからなんだよ!
   あなたいっつもここでゴミ捨ててるでしょ!
だったらなんだよ!
   私はねぇ、もうかれこれ10年近く休みの日にこの公園を掃除してるんですよ…。
それが何だよ!
   しかも…さっき…ひったくりにも…あってっ…。(泣きそうになる)
それ聞いたよ!
   そういった背景を加味すればさあ!普通その宝くじを拾うのは私でしょ!!神様ー
   ーーーー!!!!!(祈りの手で上を仰ぐ)

え、神様に…言ってるの?
   神様!どーしてこんな奴に当たりの宝くじあげちゃうんですか!!!(半泣き)
こんな奴ってなんだよ!
   普通私でしょ!…神様こいつはずっとこの公園でポイ捨てをして来た悪魔ですよ!

ちょっと静かにしろよ!皆見てんだろ…。
   こいつは今、人生の運を全て使い果たしたという解釈をすればよろしいのでしょう
   か!?(上に向かって)
何勝手に言ってんだよ!
   人生の運の量は決まってるんですよ…でも、たとえ私は運を全て使ったとしても、
   今すぐ3億が欲しい…。

だから何言ってんだって!
   こんな奴に上げたって、どうせ私利私欲の為に使いすぎて逆に破産するパターンで
   すよ神様!(上に向かって)
そんなパターンあんのかよ!
   …君さ…。(娘に向かって言う)
なんだよ!
   やさしい男と悪い男なら…どっちがいい?
え!?急になんだよ…んーっと…。
   迷うなよ!
きゃっ!
   優しい男と悪い男なら優しい男に決まってるだろ!なんで迷うんだよ!我慢して優
   しくする甲斐ないじゃないか!!
え?…いやちょっとマジで言ってる意味分かんないんだけど。
   私だって悪い男になりたかったけど、怖かったんだよ!
それただたんにビビッてただけじゃん!
   神様~、この世は優しい人に対する恩恵が少なすぎませんか~?(上に向かって言
   う)
また神様に愚痴ってる…。
   お前みたいな女が男をダメにするんだ!
関係無いだろ!
   あとさ、悪い人でもお金持ちになったりするよね!?どうして!?(娘に言う)

知らないよ!
   ポイ捨てしようが、ゴミを片付けようが、一緒だったら誰も片付ける側には回りま
   せんよ!それでいいんですか神様!!僕もう止めますよ!?(上に向かって)
うるせぇな!自分の為かよ!
   町内会の人に頼まれたら断れないんだよ私は!
そんならいいだろ諦めろよ!
   それじゃあ、私が損するだけじゃないか!
そりゃそうだけど、ポイ捨てするしないで大げさだよ!
   いい人がちょっと悪い事するとボロクソ叩かれるのに、悪い人がちょっといい事す
   るとあの人意外といい人ってさ…不公平だろ!
てめー大分溜ってんな!もう家でやれよ!!
   必要悪って言葉あるじゃない?悪が必要なんてそもそもそんなのおかしいよね!?
   そんなポジション確立したら無敵じゃん…?あの人は言ってもしょうがないからと
   か言われて…。
だからきもいんだよてめー!!
   ちょい悪おやじ?…なんだよそれ!!

古いしうるせーよ!
   あと元暴走族の人が学校の先生とか牧師とかになったりするとTVに出るでし
   ょ…?
それがなんだよ!
   最初から普通に先生とか牧師になった人の方がずっと偉いのになんでそっちはTV
   に出ないの…?

だから私に聞くなっつうの!元不良の方が、今の不良の気持ちが分かるとかだろ!
   ねえ…なんでよ…教えてよ…この世の、事柄の…解釈の…仕方を…気持ちの…整理
   を…つ…つけさせてくれよ…納得させておくれよ。(徐々に近づく)
怖っ!…もうわかりました、わかりましたのでじゃあ、失礼します(帰ろうとする)
   おいどうした?何急に敬語になって距離置こうとしてるんだよ!
ほんともう行くんで…すいません。
   ん!?おじさんが豹変して急に怖くなったか!?
いや、別にそうゆうわけじゃ…無いんで。
   いやもっと怖がれ!お前が今感じている恐怖は人間の本質的な恐怖だ!覚えておけ
   バーカ!こっちだって警察と待ち合わせてるからじゃあな!(おじさんの方がどこ
   かへ行く)
本質的な恐怖ってなんだよ……あ、もしもし神様?(スマホを取り出し話しかける)今調査終わりました…やっぱりあいつ天国に行くにはまだまだ修行が必要みたいです…。




終わり。

コント 長期囚人と新人囚人

  ボケ:三段落下がる行 ツッコミ:通常の段落の行 ()内は動き、擬音の表現


  舞台、設定:刑務所の牢屋の中に新人の服役者が刑務官に連れて来られる。


   長期囚人(ボケ):わかった…基本的な事は教えておくよ(刑務官と談笑)…おう
   新人君か?まあ入って入って。(優しい感じで)
新人囚人(ツッコミ):…。(無言で牢屋に入る)
   僕はこの刑務所で一番ベテランのシラトリです、何か困った事があったら何でも相
   談してね。      
よ、よろしく、お願い、します…。
   まずここにさ、布団が入ってて、これが君の布団ね。
…はい。
   ここがトイレで、ここに洗面具とか置いていいからね。
はい…。
   あと私物はここで、新聞とかもここに少しあって…手紙とか書く時はこの台を使っ
   てね♫
あ、ありがとうございます。な、なんか…優しいんっすね…。
   いやいや当然だよ……所で君は何やったの?盗み?
へへ…まあ、そんなところです…。
   へーそうなの…で…懲役は何年くらい?
懲役2年と6か月です、でも模範囚ならもっと早く出れるかもって弁護士さんが言ってました…。
   そう…まあここに入ったら諦めて、お勤め全うしなくちゃね。

あの…あなたは…何年くらいなんですか…?
   僕?僕は…666年。
666年!えーーっ!!な、なんですかその桁と怖い数字は!!!
  ……ん?
んじゃなくて、一体いつから入ってるんですか!?
   20歳の時に入って…。
20歳…?
   今年で50歳だからあと…636年か…。
いや全然減ってないじゃないですか!てゆうか生きてる間には絶対出れませんよね!?
   まあ、模範囚ならもしかしたら…。(考える)
いやいや模範囚でも無理ですよ!!
   恩赦とかもあるかもしれないし…。
恩赦ってあるんですか!?え、で、ちなみに何をやったんですか!?
   …ハッハッハッハッ…まあ、いいじゃないか♫(笑いながら)
いや…えー!怖えっ!!こんな人と一緒の部屋なんて…。
   何だよ、さっきは優しいって言ってくれたじゃないか♫(笑いながら)
いや知らなかったから言いましたけど…はぁ。(ため息)
   まあ、そう落ち込まないでよ。
ビビってるんですよ!!明るい感じが逆に怖い…。
   相部屋になるのは君で10人目だよ。
何回出所を見送ってんだよこの人!?
   ……テロだよ、テロ…。
え…何がですか?
   捕まった理由…。
え!?テロ!?…テロってあのテロリストのテロですか!?
   いやいやエロテロリストのテロだよ。

エロテロリストって古っ!だからテロリストの事ですよね!?で…一体どんなテロを起こしたんですか?
   国会議事堂に爆弾を仕掛けた…。

え!?うそ!?本当ですか!?そんな事件聞いた事無かったですけど…。
   模倣犯が出ないように国家ぐるみで隠ぺいされたんだ…。
真似できなさそうですけど…。
   国会議事堂に全部で30個の爆弾を仕掛けた…。
30個も…!?
   1個で東京ドームの約半分を破壊できるほど強力な物だ…。
…じゃあ30個もいらなかったんじゃないですか!?
   その全てをある一人の男に解除された…。
え!?30個全てを!?ど、どうやったんですか!?
   まぁ30個の爆弾と言っても、遠隔でこっちが指定して爆破させる為に置いてある
   1個の発信機に無線でつながっていて、その発信機を解除されちまったってこと
   さ。
えっ!?そんな…例えば別に時限式の爆弾とかは無かったんですか?
   もちろん遠隔操作を止められた時の為に決まった時刻に爆発させる機能もついて
   た…。
そうなんですか!
   それも解除された発信機からの電波がないと作動しない仕組みになってたからな。
ああ!なんでもうこう…リスクを一か所にまとめちゃってるっていうか…ちょっとなんかもったいない感じですね…。
   日本史上最大のテロ事件はまぼろしに終わった…。

そうだったんですか…。
   あの男さえいなければ…。
その爆弾の発信機を解除した奴ですか?
   ああ…わが人生の宿敵…憎んでも憎み切れない男だよ…。
そいつ今、どうしてるんですか!?
   あいつは日本史上最大のテロ事件を未然に防いだ功労者として、その後大出世しこ
   の国の中枢に迫るまでに駆け上がった…。
えっ!じゃあ今も所在を知ってるんですか!?
   当時は僕のライバルだったが、今では比べる事すらできない位の地位についてしま
   った…。
教えてください!その人今はどんなとこにいるんですか!?
   あいつはとうとう…この刑務所の副所長にまでのし上がった…。

……ん?副所長!?…この刑務所の!?
   そうだ…。
……え?え、なんかすいません…微妙ってゆうか…あれ思ってたのとちょっと違います。
   あいつは駆け上がった…。
国の中枢って言ってなかったでしたっけ?
   もう…手が届かん位にまで…化けよった!!
なんで急におじいちゃん言葉なんですか!副所長なら年に一回くらいは会えるんじゃないですか?
   まあでも…これでよかったのかもな…。
何がですか!?
   僕がテロ行為を行ったのは、この国を変える為だった…。
この国を変える…?
   そうだ…30年間かけてここで新国家の仕組み作りを構想する事が出来た…。
新国家の仕組み作り?
   あの時捕まってなかったら…30年前ならきっと失敗していたに違いない…。
…失敗?
   皆がいつもハッピーってわけには行かないが、誰も不幸にならない、平等な社会を作る…あと後継者も出来たしね♫(新人を見る)

   え?何見てるんですか!?いや俺後継者じゃないですよ!!
おいこの布でちょっとドア隠せ。(床にしいてあった布を渡す)
   え!ちょっと…何で命令?…こ、これでですか…?(入り口を隠す)
見ろ、2年かけてほった…。
   うわ!床下に穴がある!!

静かに…ここから脱獄する、君と一緒に…。
   いやいやいやちょっと待って下さい!さっきいいましたよね!?あなたと違って俺
   は2年半で出れるんですよ!?ちゃんと出てもう一度人生やり直すんです!脱獄な
   んてしませんよ!
分かるだろ?君もこの穴見た時点で、もう共犯なんだよ!!(新人の肩に掴みかかる)
   はぁ?そんなぁ!?
僕だけ脱獄しても相部屋の君だって懲役が加算されるぞ!
   じゃあ俺はどうすればいいんですか!
君は僕の若い頃にそっくりだ!行こう一緒に!
   行かないし全然嬉しくないですよ!…あれ、2年でこんな穴をほったって事はもし
   かして…前にも脱獄しようとして失敗したんじゃないですか!?
よく分かったな…それでめでたく666年…。
   やっぱり!?
ちょうどその頃相部屋だった奴も脱獄未遂で捕まって、プラス10年くらった…
   えっ!?
そいつはあと半年で出れたはずだった…。
   めちゃくちゃ相部屋の人に迷惑かけてるじゃないですか!!あなたも何回失敗して
   るんですか!!
ここには、僕のせいで懲役が加算された奴がごろごろいる…。
   超嫌われてるじゃないですか!!
正直そこも脱獄したい理由の1つだ…そろそろ命が危ない…。
   もう理念とか志とかメッキ剥がれかけてるじゃないですか!
いやそんな事は無い…僕はここから出てこの国を変える…だから健康の為に食事にも気を使って、米は玄米にして、糖質や脂分はなるべく控えてるんだ…。

   それは刑務所の食事がそうなってるだけだろ!!
しっ…誰か来る…布で穴を隠せ…。
(入り口に掛けてあった布で下の穴を隠す新人)
久しぶりだな…副所長…(入り口の方に向かって歩きながら)
   えーー!!副所長って…あの!?
…あんたがこんな地下深くまで来るなんて珍しいな…で何かようか?……え?何!?恩…赦?…っておい本当か!!嘘だろ!?
   え!?なに?…恩赦!?って!?え…まさか?
ああ…副所長が恩赦を政府に直接掛け合ってくれたんだ…僕だけに…こんな事は…初めてだ……(むせび泣きながら)
   恩赦って、え、じゃあ…もう…出れるの?
恩赦で刑期が…50年も短くなった…。
   全然たりねーーーーー!!!!!



終わり。

コント 復讐

ボケ:三段落下がる行  ツッコミ:通常の段落の行  ()内は動き、擬音の表現


舞台、設定:夜中、雨の中を黒いレインコートを着た男が大きな屋敷の前で立っている。


   レインコートの男(ボケ):やっと…やっとここまで来た…ここにあいつがいるの
   か…。思い返せばこれまで本当に…本当に長かった…。でも今日で全てが終わる…
   あいつだけは…あいつだけは生かしておいては駄目だ…絶対に許さない…。この手
   で俺が…出来る限り苦しめて…こ、殺してやるっ…。(ぎー♪、ドアを開ける)

教授(ツッコミ):(椅子に座っている)
   おい…おい!こっちむけ!
ん?君は…(椅子を反転させ向かい合う)
   おい!俺が聞いた事だけ答えろ…。
なんだ?
   お前オオヤマ教授だろ…?

だったら何だ…?
   だったら何だだと?…お前俺の事、覚えているか…。
何度も言わせるな、覚えていたら何だ?
   俺は…俺はお前に復讐しに来た!…あの時の恨みを晴らす為にお前をこの手で殺し
   に来たんだ!!
…ふー…やっと来てくれたか…。
   は!?何言ってる?おい!分かるか?本物のナイフだ、これで確実に殺せる!
…ずいぶん待ったよ…。
   動くな!お前だけは…お前だけは絶対にゆるさねぇ!…体中刺しまくって少しずつ
   苦しめてから、殺してやる!(ナイフを向ける)

…まったくもう…。
   おい聞けよ!待ったってなんだ?さっきから何言っている!?それよりどうだ、怖
   いか!どうした?それとも怖すぎて命乞いも出来ないのかっ!?(ナイフを向け
   る)
分かったからとりあえず靴を脱ぎなさい。
   うるせぇー!!最後に念仏でもお祈りでもさせてやる時間くらいはあるぞ!!
君の名前は確か…五郎君だったな。
   お前俺の事…覚えてたのか…?
覚えてるも何も…。
   俺はずっとあんたの事を殺したい程憎んできたけど、成人してからあんたと合うの
   は初めてだったよな!
そんなことはないよ…。
   いや、大人になってからは初めての筈だ!そんでも子供の時の…あの頃からあんた
   の顔は1日だって忘れた事なんて無かったぜ!!
だからそんな事無いってば…。
   そんな事無いだ?
そうだ…。
   だいたいなんだ…さっきからあんた何かおかしいぞ!這いつくばって地面に顔こす
   りつけて土下座して謝ればせっかく楽に殺してやろーと思ってたのによ!なんか妙
   に落ち着きやがって…思ってた感じとちげ-ぜ!何なんだよてめー!!(ナイフを
   向ける)
そもそも君さ…何で僕の事を殺したいの?
   …んっ?
何で僕を殺したいのって。
   それはお前っ…あれ?
例えば僕に君がなにかされたとか、大切な人になにかされたとか、普通動機があるじゃない?僕を殺しに来たんだからさ。
   …あれ?あれ?…
無いのかい…?
   …あれ…ちょっと待て…えっと…何でだっけ?
あっはっはっはっはっは(笑う)
   てめっ笑ってんじゃねーぞ!!
…いや失礼、その理由は簡単だよ…。
   黙れ!勝手にべらべら喋ってんじゃねー!
だって僕が君を作ったんだから…。
   …は!?お前が俺を作った?
そうだ…。
   あーはっはっはっはっは!(笑う)恐怖のあまりとち狂ってんのか、逃げる口実か
   なにか知らねーが、何訳わかんね-事言ってやがんだてめーわよ!!
信じられないかもしれないが…君は僕が作った…ロボット兵器なんだよ…。
   は…!?ろ…ロボット!?兵器…?お、俺が…!?
そうだ、君は殺人ロボット兵器なんだ…。

   殺人…ロボット…兵器?そ、そんな訳無いだろ!この期に及んで何ふざけた事ぬか
   してんだ!!
ならさ、子供の頃の思い出とかなんでもいいから話して見なさい。
   子供の頃の思い出…子供の頃の思い出…(ぶつぶつ言う)い…いくつくらいの  
   だ…!?
いくつでもいいよ、学校の思い出とか、家庭の思い出とか、いろいろあるだろ?
   こ、子供の頃からずっとお前を恨んで来た…そんで…あれ…あれ…!?何でだ!?
   言われてみると、あんたを恨んでた記憶以外なぜか全く思い出せない…あれっ…な
   んで…?
暗殺ロボットに幼少期の記憶も暗殺する動機も不要だからね…。
   えっ?…はっ…?
僕がプログラムしなかった事は、君の記憶には存在しないのだよ…。
   は?…えっ…?
例えばこれは何だね?(ハサミを出す)
   は、ハサミだ…。

そうだ、どんな時に使う?
   紙を切る時に…。
そうだ紙を切る道具だ…じゃあ一番最初にハサミを使ったのはどんな時だったか覚えているか?
   一番最初は確か…あれ…あれ…えっと…あれ、いつだっけ…?
なら最近はどんな時に使った?
   あれ…あれ…最近いつ使ったっけ…あれ…なんか…思い出せない…。
使った記憶は無いのに使い方は知っている、僕がプログラミングした証拠だ。
   な、何言ってんだてめー!(ナイフを向ける)
普段使う可能性のある日用品の使い方はあらかじめプログラムしている。
   はぁ!?
両親の名前は?
   …し、しらない!
兄弟の名前は?
   お、俺に兄弟はいない!
親戚とか友人の名前も分からないか?
   友人はたしか…あれ…あれ…思い出せない…?

学生時代に通ってた学校の名前は?
   確か…えっと…あれ…?どこだったっけ?あれ?ボルダリング教室には3ヶ月位行
   ってたんだけど…。
そんな学生時代おかしいだろ…。
   そんな…そんな…そんな…はぁ…はぁ…はぁ…うそだ…嘘だーー!!(自分の体を
   触る)
外見は人間そっくりに作ってあるから、分解してみないと君にだって自分がロボットなのか全くわからない。
   この俺が…殺人…兵器…?
そうだ…自分を人間だと思ってた様だが君は、暗殺対象者の画像データをインプットして、殺すまで永久に追い続ける人形暗殺ロボットの兵器なんだ…。
   そんな…そんな…?
対象者を殺害する以外の過去のデータは基本的に存在しない…。
   なんで…うそだろ…?
私はこの時を待ちわびてたぞ…。
   な、何だとっ!
ずっと待っていた…君が私を殺しに来るのを…。
   今の言葉、冗談じゃ済まねーぞおいっ!(ナイフを向ける)
私はある国に組織された軍事兵器開発研究所の総責任者だった。
   軍事兵器開発の総責任者…?

君が私を暗殺出来れば、無事に実験は成功だった…暗殺対象者の画像をインプットするだけで24時間365日、殺すまで永久に追い詰める究極の暗殺兵器の完成だったのに…。
   そんな事…ほんとにあるのかよ…?
君寝た事無いだろ?
   寝るってなんだ?
寝るって目をつぶってこう休む事だ。(寝る仕草する)
   あれか!あれなんでみんな何時間もやってんだ!?
ほらな…トイレだって食事だって本当は何でするのかよく分かってなかったんじゃないのか?
   …くそっ…うるせーよ!
でも外見は人間にしか見えないから、そんな兵器が存在する事自体、敵組織には分からない。
   …それで兵器実験の為にわざわざ自分を暗殺の対象にしたってのか!?
まぁ科学者としてはさすがに、実験段階で自分以外の人間を対象にする訳にはいかなかったからな…。
   命なんていらねぇってのかよ!
国家の為に命を捨てる覚悟ならとっくの昔に出来ている…。

   ちくしょー!あんたに対するこの猛烈な殺意は、ただの…ただのプログラミングだ
   って言うのかよ!!
そうだ、さっき君いろいろなんか言ってたけど、具体的な理由なんて1つも無かっただろ。
   おい…俺は、俺はお前を殺したら一体どうなるんだ!?
目的を果たせば電源が止まり、肉体は微生物によって分解され消滅する、ロボットと言っても君の体の約9割は有機物で出来ているからな。
   そんな…そんな…。
任務失敗もしくは敵組織に回収された際の機密保持の為だ。
   ちきしょーーーー!!!!
…本当に申しわけないが、実は私はこの光景も、もう見飽きたんだ…。
   見飽きただ!?
ああ、暗殺ロボットは君で5番目なんだ。
   5番目…?
20年前10兆円を投じた国家プロジェクトとして、我々組織は5体の暗殺ロボットを作って、私を殺すようにプログラムした後、ランダムに国外へ解き放った。
   そんな!?俺以外の他にもう4体もいるってのか?
ああ、そうだ。
   その4体は今どうしてる?
4体とも19年前に私のもとに無事たどり着いた…。
   え?…じゅ、19年前…!?ずいぶん昔の話じゃね-か!
お前だけ20年間も一体どこで何をしてた?
   え…お…俺はずっとあんたを追って…。
時間かかり過ぎじゃないのか?他の4体は1年以内にちゃんと来たぞ!
   えっ!?
なんでお前だけ20年もかかってるんだ…!?
   そんな…。
あとどんな環境下でも暗殺を遂行出来るように、武器の類は5体とも最初から持たせなかった…暗殺に使う武器くらいは自分で調達して欲しかったんだ…。
   それがなんだ!?
ナイフって…。
   は?
しかもダガーみたいなちょっと変な感じの奴だし…。
   いいだろ別に!
他4体はライフルとかマシンガンとかスティンガーミサイルとかしっかりした奴ちゃんと持ってたぞ!!

   う、うるせぇー!!
5体にはそれぞれ特徴があった…中でもお前の特徴は憎しみだ…、暗殺対象者に常に過剰な憎しみの感情を抱くようにプログラムした。
   くそっ…それでかっ!
その結果が暗殺対象者にたどり着くまでのこの遅さか…今更だが貴重なデータだ…。
   そっちこそ!その19年前に4体もたどり着いたのに、何でテメーはまだ生きてん
   だよ!
気づいたか…まぁ早い話が4体ともお前と同じく欠陥品だったからだ。
   ふっはっはっはっはっは!(笑う)笑えるぜ!大金使って、殺人マシーンを作った
   割には全部欠陥品とはなっ!
4体とも待っていたんだ…。
   は?何を待ってたんだよ!?
君だよ…。
   は?
4体にとってはまぁ君は弟みたいな存在だからか、待ってたんだよ…ずっと君が来るのを…全く、余計な事を覚えやがって…。
   余計な事を覚えた…?
サイボーグには5体とも人工知能が付いている、恐らくこれが失敗の原因だろう…。
   人工知能…?
殺人兵器としての能力と、任務遂行の意思だけをインプットすれば、恐らくこんな事にはならなかった筈だ…。
   自分で作っておいて今更何言ってんだっ!!
黙れ!…お前らのせいで研究所は閉鎖!新兵器開発のプロジェクトも終わっちまったじゃねーかばかやろーーがっ!!
   急に何だよ、俺のせいじゃねーだろ!
一番殺意の有ったお前がすぐ来てればよっ!クソがっ!!
   しょうがね-だろ!ナイフが全然手に入んなかったんだから!
ナイフなんて一番すぐ手に入るだろ!何年かかってんだよ馬鹿が!
   だったらもっとちゃんと優秀に作れよ!
変な形のナイフだしさ…

しかもここに来てまで殺そうかどうしようか、ぐだぐだ迷ってんじゃね-よ!
   うるっせーよ!お前もうほんとマジで殺すからな!(ナイフを向ける)
どいつもこいつも人間っぽさとか、情とか覚えてんじゃね-よ!所詮殺人兵器のくせによ!
   おい…あんた最低だよ…他のサイボーグ達は今どうしてんだよ!?
…君の事を待つと言う選択が人工知能に任務失敗とみなされ4体とも消滅したんだ。
   そんな…それ…マジかよ…。
あーああ…私の人生を賭けた大プロジェクトもこれで本当におしまいだ…。
   それ本当なのかよ!
なにがだ?
  ほ、ほんとはよ…自分を作った人間を殺したくないって…人工知能が判断したんじゃね-のかよ…。
  人工知能が?…そんな…ありえない…。
どうしてそう言えんだよっ!
   人間の頭脳をも超える最先端の人工知能が、そんな事考える訳ないだろ…。
それは逆だろ!人間を超えるんなら、人間が想像もしない感情が芽生えたっておかしくない筈だ!
  そんな…人工知能が私のプログラミングを勝手に書き換えて、任務を拒否したと…?
そうだ…。
  ならお前はどうだ?お前はこの20年間で何を学んだと言うんだ!
俺はこの20間で覚えた事は…
  なんだ!?
ボルダリングのコツは壁を掴んでる手をたまに変えて疲労を回復させるって事だ!!

  それは確かに想定外だ…。                  



終わり。